このまま朝まで眠れるほどゆったりしている。これは、旦那の祖父母からの結婚祝いだ。膝掛けに包まって眠れるのを待ったが、どうにも寒くなってきた。

このまま寝てまた風邪を引いてしまっては馬鹿らしい。私はヒーターを消して仕方なしに寝室へと戻った。

旦那は布団を被って眠っているようだった。私は恐る恐る布団に入り旦那に背を向けて身体を丸めた。

足が冷えてなかなか寝付けない。前はよく冷えた足を旦那の足に絡めて温めていた。

今は彼に触れることさえ私にはできない。冷えた足を懸命に擦り合わせ温めた。

「どこ行ってたの?」

不意の言葉が背中に突き刺さった。

「え、起きてたの?」

質問に、質問で答える声が震えた。時差ボケでイマイチ眠くなくて、と彼は答えた。

一週間、バルセロナに出張に行っていた。海外出張と聞くとどこぞのエリート商社マンかと思うが、実際は手取り二十万もない安月給の中小企業のサラリーマンだ。

そんな彼がどうして海外出張なぞに行かされるのか。出張手当が出るわけでもない。

ただ、現地ではどうしても金が必要だ。結局普段の小遣いとは別に、五万円を持たせたのだった。

「出張といってもほぼ旅行みたいな感じだったよ」

こちらの気も知らないで、無神経に彼はバルセロナでの出来事をあれこれ話し始めた。本場のパエリアと言っても、店によって全然味が違う話、生ハムにもたくさん種類があること、カヴァという現地のワインが飲みやすくて美味しいこと。

そんな彼の話を聞きながら、私は先程の彼の行動の真意が、気になって仕方がなかった。