そんな気持ちで診療にあたっていますが、坂下病院のような小病院では赴任した当時は年に数例くらいでした。でもこの数年、膵がん患者さんの数が増えたように思います。実際今回のように同時期に複数の膵がん患者さんを受け持つことが珍しくなくなりました。

この現況は高齢社会によりもたらされたものなのか、治療が進歩し延命できるようになったためなのでしょうか。でも手術はともかく化学療法はあまり変わっていないように思います。

がんの進行度にもよりますが、経験では化学療法を続けた方と何もしなかったHさんと余命には大差がないように思います。そう考えるとやはり膵がんが増えているのだろうと思います。

さて古い話ですが、化石医師が救ってあげられたと思える膵がんは5mmの大きさでした。5mmの方は自覚症状がない状態で膵臓の管の変化からがんを疑い、術中の超音波検査でようやくがんが描出された方でした。

このように膵がんは症状が出てからではなかなか治療ができない場合が多いのです。そんな膵がんに対しては、毎日の診療の中で「もしかしたら膵がんが隠れているかもしれない」。そんな意識を忘れないことが大切です。

最近消化器科以外の科の医師は腹部を診ない傾向が強くなっています。腹部の所見の記載もありません。自分は専門ではないから見落としても仕方ないと考えているのでしょうか。でも受診される患者さんは自分の全てを託しているのです。たとえ専門ではなくても「最大限の努力をして診察する」。そのように思うのはやはり化石だからでしょうか。

ある進行膵がんの患者さんがいました。発症数年前に腹部のCT検査が行われていました。その画像を見直しますと、もう少し検査を進めていたらどうだったかと思います。小さな膵がんの診断は難しい。