第三に、診療ガイドラインなどによる医療のコモディティ化があります。

医療のコモディティ化にはどこの地域、どこの医療機関でも一定レベルの医療が享受できるというメリットがある反面、専門家やスペシャリストの存在意義を否定するリスクがあります。ワトソンのようなAIで病気が診断できるようになるとついには医師免許すら不要になるかもしれませんし、そのような危機感はすでに薬剤師の間で広がっています。

薬剤の調剤をロボットがする方が効率的で間違いがないとしたら、人間が調剤したら違法なんて状態になる可能性すらあります。薬剤師の生き残り策として、2014年に岐阜薬科大学博士課程が、中京大学大学院ビジネス・イノベーション研究科と連携して、Ph.D.(薬学・薬科学博士)とMBA(経営管理学修士)のダブルディグリー(2学位同時取得)を可能とするプログラムを開始しています。

今後、経営学の知識を有する薬剤師は病院内で大きな戦力となります。

第四に、高齢化の進行、医療の高度化による医療費の高騰は著しく、限られた医療資源をいかに有効に活用するかといった視点が必要になってきたからです。もちろん医師、看護師などの不足も医療の世界にマーケティングが必要になってきた要因です。

利益が減少してきたら、救急患者をとりあえずたくさん集めようとか、日曜日にも入院させようとか、退院日を遅らせて病床稼働率を上げようとか、そのような短絡的思考でのマーケティング・マイオピア(これについては次の章で述べます)があります。

そのような視点では職員が疲弊し、周囲の医療機関からの尊敬を受けず、むしろ収益が悪化します。病院組織の中にマーケティング戦略を考える経営企画部や広報部などが増えているのも、これらの要因との関係が強いと考えています。