少しでもお金を貯め、早く仕事を辞めて子供を産みたい。その目標をバネにただただ毎日働いた。

絶望的だったのは肝心の父親になるはずの旦那に子供が欲しいという気持ちが微塵もないことだった。それは結婚前から分かっていたことだった。それでも結婚すれば、歳を取れば、周りに子供ができれば、きっと欲しくなるだろうと思っていた。甘かった。

ハギは結婚してからも私を彼女扱いした。それは女として光栄で喜ばしいことなのかもしれないが、私は複雑だった。彼は私を母親にしようとはしてくれないのだ。

当然、未来の子供のために頑張ろうという気はさらさらなかった。子供のための預金をしようと提案したが、彼は預金するお金があるのなら己の趣味や飲食にもっと金を掛けたいようだった。それならばもう少し働いて給料を上げることはできないのかと何度も打診したが無駄だった。

次第に私も、この人は父親になれるのだろうかと不安になった。いざ子供ができれば変わる、そう言う人は大勢いたが、できてから、やはり変わりませんでしたでは困る。将来への不安とうだつの上がらないハギへの苛立ち、閉塞感で生きる意味すら分からなくなった。

とにかく、お金を貯めよう。助けてくれる親もいないのだから、子供を自分一人でしっかり育てられるように、仕事を辞めて専業主婦になれるように、今のうちから準備をしておこう。私がお金のために始めたことは風俗だった。

そう、私は人妻風俗嬢になったのだ。店名は、メンズエステ『ピンクらぶ』である。本当に好きな人としかセックスができないという人間が果たして風俗で働けるのだろうか。答えはイエスだ。

本当に好きな人としかセックスができないというのは事実だ。それはお金が絡んでも一緒だった。どんなに大金を積まれても、というのは非現実的な話だ。例えば一億円積まれれば世の中の一体どれだけの女性がセックスを許すだろうか。一億円なら私もできる。

しかし実際芸能人やよっぽどリッチなパトロンが付いたキャバクラ嬢でもない限り、一般人の売春の値段の相場は三万円程度だ。

私はその程度の金額でセックスをサービスとして提供することはとてもできなかった。好きでもない人とセックスをすることで私が感じる身体的、精神的ダメージは三万円では補えない。しかし私がセックスしても良いと思える額は、客がセックスと引き換えに私に払っても良いと思える額とは決して釣り合わないのであった。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『不倫の何がいけないの?』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。