コーヒーが入った。

「このコーヒーいい香りがするね。いつも上手に作ってくれるわ。美味しいわ」
と飲みながら言った。

「おいしいやろ。このインスタントコーヒー、私一番好きなん」
と笑顔で応えた。雑談をしながらタイミングを見計らった。そして切り出した。

「この前な、ゴルフの友達の奥さんが、ご主人とお酒を飲んでいたとき、急に倒れて救急車で運ばれたけれど、脳梗塞でそのまま寝たきりになられたそうや」

「そう。寝たきりになられたの。可哀想やね。ご主人も大変や」
と驚いた様子だった。

「奥さんは、僕たちと同じ76歳だそうだ。女性なのにお酒好きで高血圧だったそうだよ。それだけに、ご主人が一番困っていたんだって。棚橋さんたちも、高齢なので早めに健康診断を受けた方が良いと、アドバイスしてもらったよ」

「年取ると、どこか身体が悪くなるのやね」
と言った。

「そうや。どっちが倒れても大変や。既に病気にかかっているかもしれないから、早めに健康診断をした方が良い。老老介護は、すごく大変やからな。いつまでもお互いに元気でいたいから、一度、お父さんと健康診断に行かへんか。新田辺にいいクリニックがあると聞いてるので行こか」

と言った。

「お父さんが、倒れたら私、よう面倒みんわ」

「そうや。お前大変やで。逆にお前が倒れても、お父さんが大変や。来週にでも二人で行こか」

「うん。お父さんと一緒やったら行くわ」
と言ってくれた。内心ホッとして胸をなで下ろした。