「もう少しです」

体の痛みをこらえ、足を引きずるように歩くボサードを徳間は励ました。

外に出る門に着いた。

「止まれ! こんな時間にどこに行く」

門を警備している人民軍の兵士が二人を制止した。

兵士は長い警棒を出して二人を遮っている。ボサードは顔を上げず、黙ったまま下を向いていた。顔は網み笠で隠れている。

「私の通訳を送って行くところです」

徳間が中国語で答えると、兵士は徳間を見た。徳間のことは知っているので、警棒を引き、遮るのをやめた。しかし、もう一度、ボサードを見ると、夜中に笠をかぶっている姿を怪しんだのだろう。ボサードに話しかけた。

「おい、おまえ。なぜこんな晴れた夜中に笠をかぶっている」

中国語だったので、何と尋ねられたかわからず、ボサードは徳間に言われたとおり黙っていた。

徳間が中国語で答えた。

「私は明日、帰国します。彼に書類の記載を手伝ってもらっていましたが、今日で最後なので遅くなりました」

人民軍の兵士は、ボサードを日本人に協力している同胞の中国人だと思ったのか、忌々しそうに舌を鳴らし、持っていた警棒で、ボサードのふくらはぎを「ビシッ」とたたいた。

「うっ」


ボサードは痛みに耐えられず、声を上げてその場に膝をついた。