序文

本書の目的

本書は題名が「神からの自立」となっておりますが、いわゆる宗教書ではありません。「我々人類は滅亡よりも存続を、そしてこの地上に地獄よりも理想郷を築くことを希望する生命体である」ということを前提とし、この希望の実現について思いをめぐらしているものです。この地上とは、人類をはじめその他一切の動植物を乗せて宇宙空間を飛行しているこの宇宙船地球号のことです。

人類は永遠の生命を持たず、生まれて老いて死する生命体ですが、来世とか死後の世界にではなく、現世である生存中に全ての個が平和と幸福に包まれて生を全うすることのできる理想郷をこのかけがえのない宇宙船地球号の中に築きたいものです。

本書副々題の「子供のようなよしなき思い」はこの思いにつきるのですが、この思いなど至極当然でわかりきっていることなので、今さらあらためて取り上げるまでもないように思えるかもしれません。しかし、我々人間界を見渡し、そこで起こっているさまざまな憂慮すべき事柄から判断しますと、この人類の希望こそまさに今我々は強く再認識しなければならない時であると思います。

その理由は、我々人類の行動がその希望とは裏腹に「人類自滅のリスク街道を加速度的に驀進中」という様相を呈している現実があるからです。理想郷を築こうにもその前提条件である人類の存続が大きく危ぶまれる状況にあるということです。

人類自滅のリスクまで心配しなければならない現実を創造しているのは「今ある世界」であることは自明のことですから、「今ある世界」に存在する難点を克服した「新しい世界」へ円滑かつ速やかに移行して行くことができれば、人類が自滅のリスクから解放される確率は高くなります。

本書は、この思想に沿って、「今ある世界」の中に存在する人類滅亡のリスクまでもたらしかねない主たる因子を明らかにし、それを取り除きそのリスクを回避すること、そして回避できた暁の「新しい世界」を論じると共に、我々の宇宙船地球号の中に人類の理想郷を実現する夢を語るものです。

本書の構成

本書の構成は、第1章が「本書の重要事項」となっており、本書の思考や考察に関わる基本的事項を記述してあります。第2章は、「人類滅亡のリスクと回避」を総括的に概説している本書の核をなす章で、以下第3章から終章までは、本章について説明するための章となっており、下記のような構成となっております。

第3章 有神論と無神論
第4章 宗教の概括
第5章 宗教の考察
第6章 宗教の光と影
第7章 神からの自立
第8章 地上の理想郷

本書題名の由来

今ある世界は人間同士の争いによる人類滅亡のリスクを孕みますが、そのリスクの主たる因子の一つに宗教があります。このことは、人類滅亡の回避が期待できる「新しい世界」においては、「神からの自立」そして「宗教からの自立」の必要性が認識され要請されなければならないことを意味します。

然るに、世界の大半の人々がなんらかの宗教を信仰している「今ある世界」の現実に逆行する「神や宗教からの自立」という思想は多くの説明なくして理解されることではなさそうです。それゆえ、本書は大半が神や宗教で埋まることになりました。

このような背景から、本書の題名は「神からの自立」としてありますが、これは「神からの自立」と「宗教からの自立」を代表しているものです。

又、副題の「今ある世界から理想郷の世界へ」は本書の目的であり、副々題の「子供のようなよしなき思い」は、“本書の目的は所詮子供が夢見るような実現することのない非現実であるのか”という筆者の複雑な思いを含んでいるものです。