第1章 本書の重要事項

本章では、本書の思考や考察に関わる基本的な重要事項をお話ししています。これは、知的生命体としての人間、人間第1主義、有神論・無神論関係、および本書の主たる思想を語る上での前提や思想などから成っています。この中には、後の章で語られたり結論されていることも含めてあります。

なぜなら本書の文脈により、そのことがその章より先行する章の中で既に言及されていることがあるからです。例えば、「神の言葉の不存在」は第5章で証明されていますが、その成果は先行する章で既に語られています。つまり、これらの事項は本書の中で縦横無尽にそして繰り返し使用されているものです。

重要事項01 子供のようにあれ

人は、素直であり、際限のない疑問を持つ子供のようにあれ。素直を失い、疑問を中途で放棄し、安易な妥協に安定を見出すことを成熟した精神を持つに至ったと錯覚するような愚かな大人にはなるべからず。

重要事項02 全知全能と無知無能

我々人類は、全知全能に比べれば、無知無能の近くに位置しています。我々はこの現状から全知全能の方向へ進むことはできるのかもしれませんが、全知全能は無限の彼方に位置しています。この実状にもかかわらず、我々は無知であることを正しく認識できていません。

(ノート)

ところで、全知全能は一見わかりやすくてありそうな概念ですが成立しません。又、ゲーデル(クルト・ゲーデル Kurt Gödel)やチャイティン(グレゴリー・チャイティン Gregory J. Chaitin)の不完全性定理により、完全な系は存在しないことは証明されています。従って、「全知全能」は「全知全能に近い概念」そして「完全な系」は「完全に近い系」というのが成立しうる上限になります。

そうしますと、神を「宇宙万物を創造した全知全能にして完全な系」と定義した途端、神は存在しないことになりますが、神の存在・非存在はこのようなことで決まることではありません。なぜなら、宇宙万物の創造と神が全知全能でないことや完全な系でないこととは必ずしも矛盾しないからです。なお、この点につきましては、「第3章1-2.宇宙万物を創造した全知全能にして完全な系」に詳細です。