捕獲試験をする機会を得た

■捕獲の詳細

2015年に、大阪府南部にある観光牧場で野生のハツカネズミを対象として捕獲試験をする機会を得た。

1 仕掛けの構造

ハツカネズミはクマネズミと違って足元が不安定になることを気にしない。気にしないどころか、私が作ったシーソーの仕掛けを楽しんでいるのではないかと思うほどだ。そのため、よりシンプルな構造で連続捕獲することができると考えた。その構造について述べる。

入り口にはシーソーがあり、ネズミがそれを乗り越えて奥に入ると、シーソー板の奥の下端が付属品に引っかかって動かなくなる。入り口が塞がれて出られなくなるので奥の通路を進むしかない。狭い通路を通り一方通行のドアを押し上げて奥の部屋に出る時に足元の板を踏む。すると、付属品の引っかかりがはずれて入り口のロックが解除される。これを繰り返すことによって、連続的に捕獲可能になる。シーソーが動かないよう固定すれば餌付けモードにすることもできる。この仕掛けは3つ目の国内特許だけでなく、アメリカでの特許にもなった。

2 設置場所

試験場所はウシ、ウマ、ブタ等様々な動物たちと触れ合うことを目的とした施設で、鶏、アヒルなどの鳥類も飼育している。2015年3月11日から7月25日までの前期の調査では、主な施設から幅13mの未舗装道路[写真1]によって隔てられた鶏、アヒルなどの鳥類を飼育している鶏舎[写真2]を中心として捕獲を行った。その場所以外での捕獲許可が下りなかったのだが、主な施設と隔離された環境にいるネズミを残らず捕獲すれば、ドブネズミの場合と同様に、その構成を詳しく調べることができると思った。

[写真1]この未舗装の道路はハツカネズミにとって大きな障害になるはずだと思っていた。集団で行動していると誰が思うだろうか
[写真2]飼料粉砕機のある小部屋の入口

その建物の入口付近には飼料粉砕機があり、いつも粉砕された飼料が周囲にこぼれていた[写真3]。餌場としてはとても重要な場所である。鶏舎内に立ち入ることはできないが、飼料粉砕機の周辺に小さい糞が沢山あったので、鶏舎にいるネズミたちが多く集まってきているのだと思った。そして、鶏舎の入り口周辺にだけ設置して捕獲試験を始めた。

[写真3]砕かれて小さくなった餌が周辺に沢山こぼれていた

その後、6月13日から未舗装の道路を挟んで反対側に位置する物置小屋でも追加して捕獲を行った。鶏舎は未舗装の道路によって他の施設から隔離されているので、横断してまで行き来している個体はいないと思っていたのだが、そうではない可能性が浮上したからだ。

7月末に一旦捕獲を中止したのだが、その理由は追って説明する。とにかく、前期捕獲のデータを整理していると不思議な事柄をいくつも発見することができ、予想外に捕獲が順調に進んだこともあって、5カ月後の12月に再び捕獲の許可を願い出ると、他の場所でも捕獲を許可してもらえた。捕獲後期には、冬季に毎日欠かさず暖房を行なっているので生息場所として申し分のない場所であるペットハウスと、その近くにある事務所を捕獲場所として追加して捕獲を行った。捕獲場所周辺の様子が良く分かる様に1枚の写真を付け加える[写真4]。

[写真4]捕獲場所周辺の様子

飼育小屋が1列に並んでいる様子を入り口付近から撮影した。入り口付近には管理棟としての役割を持つ事務所と名付けた建物があり、後期の捕獲場所である。ペットハウスと名付けた建物は一列に並ぶ小屋群の中ほどの場所に有り、物置小屋は最も離れた場所に有る。そして鶏舎は、さらに幅13mの未舗装の道路を越えた場所に有る。

3 捕獲具

前期の捕獲では、それまでにハツカネズミを捕獲したことのある複数匹捕獲の仕掛けを、餌付けのために使用する目的で3台用意した。そして、連続捕獲具を4台と1匹取りの仕掛け2台を用意して捕獲試験を始めた。さらに、前期と後期の捕獲期間を通じて捕獲具の改造を3回行っている。

捕獲具内が尿と糞で汚れるのを防ぐために捕獲エリアを画用紙で囲いを作った際、4月3日に体重11.0gの個体が囲い上部に直径15mmの穴を開けていたのを確認した。入口の高さが不足していると判断して仕掛けの入口の高さを20mmから30mmに改造することにして、5月13日からは入口の高さが30mmの捕獲具を使用した。クマネズミの仕掛けの入り口の高さが3.5㎝なので、ハツカネズミなら2㎝もあれば十分だと思っていたのだが、違っていた。

2回目の改造は、誘因効果を上げるために入口上部にパンの小部屋を設けることとし、改造を行って、前期(6/27)の物置小屋の設置から使用し、後期はすべて改造した捕獲具を使用した。ネズミの回収時に、入口のシーソー板が上に上がってロック状態になり、続けて他のネズミが入れない状態になった捕獲具が時々あった。それを解決するために、捕獲されて中にいるネズミが入口のロック状態を解除できるように改造を加え、後期捕獲からはそれを使用した。

4 設置方法

餌には食パンを使用し、捕獲具の中に1枚を入れ、入口周辺には誘引するためと周辺にネズミがいるかどうかを判定するために小さく切ったパンの小片を2~3個置いた。前期は3~4日に1回の点検を行い、ネズミの回収とパンの交換を行った。後期は毎日点検を行い、ネズミの回収と必要に応じてパンの交換を行った。後期には捕獲できない状態が数日続いたので、2度餌付けをして捕獲を行った。

5 解析方法

4月6日以降に捕獲された個体をすべて冷凍保存し、東京にある研究施設に送付して、各個体の頭胴長、尾長、後足長、体重、成熟状態を調査頂いた。雌個体については胎児の個体数と出産経験の有無を合わせて報告して頂いた。

6 結果

1つの連続捕獲具に最高7頭のハツカネズミを捕獲することができた。前期の捕獲当初に使用していた入り口の高さが20mmの捕獲具を使用した場合、餌付けに15日かかったのだが、入口の高さが30mmの捕獲具を使用した5月13日からは餌付けを行わないでも捕獲することができた。捕獲最軽量個体の体重は2.9gであった。総捕獲数160頭(雄76頭、雌84頭)の頭胴長と体重の平均は75.73mm、12.54gで、雄と雌の頭胴長と体重の平均はそれぞれ、雄73.82mm、11.6g、雌77.45mm、13.39gとなった。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。