第3章 脳梗塞のタイプ

◎MRIの診断で問題となる脳梗塞類似病変

大脳白質病変

しかし、白質病変の程度が高度の場合には、脳梗塞とは違って微小動脈病変による循環障害を疑うことになります。そのような場合には、脳卒中の危険因子(高血圧、高脂血症、 糖尿病、喫煙など)の治療や生活習慣の改善が必要です。

まだはっきりした根拠はありませんが、白質病変の顕著な高齢者を多く診ていると、転倒を繰り返す傾向があります。

稀に、脳梗塞なのか多発性硬化症などの白質病変なのか、診断に苦慮する症例に遭遇することがあります。 そのような際には、3カ月以上空けて再検してみると、多発性硬化症では消失することが多いですが、変化が無ければ陳旧性白質変化と考えてよいと思います。

ラクナ梗塞と血管周囲腔拡大との鑑別
この両者の鑑別点を表示しました。ラクナ梗塞は高血圧の患者さんに多くみられます。脳深部へ行く穿通枝の閉塞による小さな梗塞(穿通枝梗塞)です。大脳基底核・視床・橋に多く認められます。

ラクナ梗塞は、T2強調画像で高信号、T1強調画像で低信号を示す境界明瞭な小さな円形病変として描出されますが(図1)、診断に当たっては、拡大した血管周囲腔との区別が問題となります。

[図1]80代女性のラクナ梗塞のMRI・フレア画像。両側大脳半球にいくつかの点状の高信号病変を認める