第1章 脳梗塞とはどのような病気か?

脳梗塞とはどのような病気か?

脳主幹動脈閉塞で脳梗塞になった有名人には、巨人の終身名誉監督である長嶋茂雄氏、サッカー日本代表の元監督のイビチャ・オシム氏、第84代内閣総理大臣の小渕恵三氏がいます。

脳に、血液が送られ続けること、このことが、「なぜ」そして「いかに」大事なのでしょうか。

食事(血液)が喉(脳血管) に詰まった場合を想定してみてください。咳き込むくらいですめばいいのですが、命に関わることも少なくありません。脳梗塞は、簡単にいえば、脳の血管が様々な原因によって詰まり、血液による酸素や栄養の補給が足りなくなって、その血管の領域の脳組織が死んでしまう病気です。

[図1]をご覧ください。上の逆ハート型の部分は大脳(半球)、間脳、脳幹で、下のおむすび型は小脳(半球)です。左上図は脳出血(左側の脳)です。他の3図は脳梗塞で、向かって左側の大脳・前頭葉(右側の脳)の一部が変色したり萎縮したり穴があいたりしている部分が脳梗塞になった領域です。

[図1]脳の断面像。左上:高血圧性脳出血。右上:脳梗塞(新旧混合)、左下:脳梗塞(陳旧性)、右下:出血性梗塞。(モンテフィオーレ病院平 野朝雄先生提供)

(以後の各画像は、向かって左側が右の頭部、向かって右側が左の頭部です)

脳梗塞が起こると、詰まった血管、そして障害を受けた脳の中の領域によって、運動、言語、感覚、記憶など様々な機能に障害が出ます。また脳梗塞は、一回の発症による後遺症がたとえ軽度であっても、再発しやすく、発作を繰り返すうちに症状の増悪をみて、ついには重篤な後遺症(寝たきりの状態)を来す可能性が高いのです。

脳梗塞はどのようにして起こるのか?

脳梗塞を起こす血管の詰まり方にはいろいろあって、治療の仕方や予防の方法が全く異なる場合もあるので、鑑別診断が重要です。詰まり方には大きく3通りあります。その他にも種々あるのですが、それらについては4つ目として後述します。

1つ目は、比較的太い頸部および頭蓋内の脳動脈にコレステロールなどが沈着し(動脈硬化=粥状硬化)、動脈の内腔が狭くなったところに血栓ができて(狭窄や閉塞)、そこから先へ血液が流れていかなくなって脳の組織が死んでしまうもので「アテローム血栓性脳梗塞」といいます。

2つ目は、心房細動など不整脈を起こす心臓病により、心腔内にできた血栓がはがれて脳の動脈へ移動し、動脈を塞いで起こる梗塞で、これを「心原性脳塞栓症」といいます。

3つ目は、直径1㎜未満の脳内の細い動脈が同じくコレステロールなどの沈着で詰まってできる直径15㎜以下の小さな脳梗塞(ラクナ梗塞)です。

脳卒中の専門医は、脳梗塞の患者さんを診療するとき、まず本人や周囲の人たちの話を聞きます。その後、診察やいろいろな検査を行い、この3つのタイプのどれに当てはまるかを見極め、その上で治療を行っています。

ここで、重症の心原性脳塞栓の患者さんの例を2つ提示いたします。もっとも、脳梗塞はこのような重症の方ばかりではありませんので、その点はご留意ください。

1例目(図2)は70代後半の男性。突然の意識障害と右片麻痺で発症しました。既往歴として心房細動があります。発症後1時間の単純CT検査にて、左中大脳動脈水平部に一致した高吸収値陰影(矢印)を認めますが、対側もやや高吸収値のため判断が難しく、左中大脳動脈の方がより高い(白色)ようです。

MRA検査にて左中大脳動脈閉塞(矢印)と明瞭に診断できました。この患者さんは急性期を脱し、回復期リハビリテーション病棟で右片麻痺と失語症のリハビリを受けて在宅復帰されました。

[図2]中大脳動脈閉塞の脳画像。左:CT、右:MRA。CT上、左中大脳動脈が高吸収となっている。MRA上、左中大脳動脈が起始部から撮像されない
※本記事は、2020年1月刊行の書籍『脳梗塞に負けないために 知っておきたい、予防と治療法 』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。