観察結果から深夜に行われた大騒ぎの顛末を推理してみた。実際、どのような行動が行われていたか不明だが、少なくとも、捕獲具の中には血を流してまで外に出たいと努力する個体がいて、外には途中であきらめずに、やはり同じように血を流してでも助けたいとおろおろする個体がいたことは間違いない。

中の個体は外の個体にとって、とても重要な存在だから途中で救出作業をあきらめる訳にはいかなかったのだろう。それぞれの個体間に強い絆があると考えるほかない。

後日確認すると、それ以来ネズミはいなくなったそうである。こんな危険な場所は寝床として相応しくないと判断し、口元の腫れあがった親が同じく口元を腫らした子たちを連れて一斉に出て行ったと考えられないだろうか。

夫婦の絆?

ある日、松山支店の社員が面白い写真を送ってきた。とても大きいクマネズミが粘着シートにかかっていたのだが、しっぽの半分ほどが齧られて骨がむき出しになっている。前足2本と後ろ足の片方も途中からなくなっていて、なくなった前足周辺に最も多く血が付いていた(悲惨な状況で写真は掲載できない)。

粘着シートにかかったネズミは随分沢山見てきたが、こんな例は初めてなので、レアな観察例だと言って良い。木造家屋の一階の天井で見つかったのだが、イタチ等の他の生物は生息していなかったとのこと。部屋に糞が落ちていないし足跡もなかったので、部屋には降りてきてはいない。11月の寒くなりかけた頃に寝床として侵入していたらしい。

粘着シートに捕まった、とても大きい個体を助け出そうとした結果だと思われる。子ネズミが粘着シートにかかる場合がほとんどなのだが、動けなくなった子を親が認識したからと言って、今回のように助け出そうと尻尾と足をくわえて引っ張ることはなかった。行われた行為を想像すると鬼気迫る思いがする。

とても大きい個体に限っ て、今後もこのような観察例があるとすると、この大きい個体が、集団の中で特別な存在だから救出しようとしたのではないかと言う疑問が湧いてくる。この現場では、この個体が捕まった後に足音がしなくなり、いなくなったとのことであった。

この場合も、寝床として危険極まりない場所であると判断した残りの片割れが子を連れて出て行ったと考えられないだろうか。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。