第1部 捕獲具開発

3章 仕掛けとその効果

4 餌付け機能を備えた1匹取りの仕掛け

B 捕獲例2 クマネズミの場合

実施例2 グループホームの場合(集団脱走)

観察記録

私はこの時にどんなことが行われていたのかを推理してみた。まず、どのようにして脱出したのだろう? 入口にはL字金具が付いているので、入ったところを押し上げても簡単に隙間はできない。少しバネを押し上げた時に、入口の左右の端に隙間ができる。右端、もしくは左端を内側から押すことによって、 隙間を広げれば脱出できる。

ドブネズミとクマネズミ3頭の捕獲の際は自力で脱出できなかったので、内側からの力だけでは無理だったのだろう。そもそも毛が抜け落ちていなかったのだから、脱出することを早々にあきらめたと考えられる。今回は外に協力者がいて脱出の手助けをしたことは間違いない。外からの協力があれば脱出できる仕掛けであることが証明されたのだ。

この場合の協力とは、直接的な行動だけではなく、近しい間柄であれば、外にいるだけで発揮される協力も含まれる。

例えば、仲間が大勢外にいるだけで、出ようとする力が湧いてくるように。また、運よく最初の1頭が脱出できたのを、中の他の個体が知れば尚更である。しかも、午後3時頃に設置して、おそらくすぐに5頭は中に入って捕獲されたのだが、外にいた個体と中にいる個体が協力して2時間ほどで脱出方法を発見したことになる。

どの時点で、どのようにして口元を怪我したのかを推理した。まず、左上の個体の脱出についてである。入口に取り付けたL字金具の一部が下に押されて変形していたが、これは入口が少し開いた時に、中の個体が出ようとして左下にあるL字金具の一部を下方向に押し続けたことによる変形である。

この場所の中と外に血が付いていないので、この時点で外の個体と中の個体は怪我をしていない。ただ、押し続けて変形した部分の反対側に位置するプラスチックの踏み板上に血が沢山付いていた。

その後プラスチックの踏み板に乗って出ようとしたのだろう。より大きい力が必要になった。外と中の個体が鼻先を隙間に入れて押している途中、どちらかがあきらめて身を引いた瞬間に事故が起きたのだろう。鼻先を挟んでしまって出血するほどの大けがをしたのだ。

何回も繰り返している間に外の個体も口元を怪我したことが、外に付いた血痕から推測できる。出血の多さから中の個体の方が、より傷が深かった。そして、中にいた個体は共同作業の結果脱出に成功した。

次に、中上の個体はプラスチックの踏み板を後方に押し下げることで無事脱出できたのだが、L字金具の外側に血が付いていたので、外に口元を怪我した個体がいて脱出の手助けをしたのだろう。

※本記事は、2020年6月刊行の書籍『捕獲具開発と驚くべきネズミの習性』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。