筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

命の片道切符

『読売ジャイアンツ原辰徳監督に会いに行こうツアー 二○一三 秋』

(五)家族の宿題は「往」は新幹線、「復」は介護タクシーに

もし試合が延長戦にでもなり原辰徳監督がホテルにおいでになるのが予定より遅れたら、帰りの新幹線に間に合いません。個室という関係もあり、次の便に換えるということもできないこともわかりました。そこで『往』は新幹線で『復』は介護タクシーにしようということになりました。

介護タクシーは、広島県ALS協会推薦の業者さんです。協会の行事にはいつも出動され、運転手氏はとても細かい心配りのできる素晴らしい方だとのみなさんのお墨付きです。これで全て準備は完了ということになりました。

(六) いざ、出発。

平成二十五年九月十五日。訪問主治医角川先生の雨男、わが娘の雨女そろい踏みにも関わらず、泣きかかっている空ではあっても、辛うじて降らずに保っています。暑くもなくてちょうど良いお天気です。ここでも天の恵みに感謝をしました。

子供時代の遠足を思わせる気分の高揚を覚え、娘夫婦、私もいささか緊張をいたしました。何回も何回も持ち物を点検し、車椅子を止めるテープも一本一本確認し、時を待ちました。

ただこうした中、唯一泰然自若としている夫を見て、私は思わず笑ってしまいました。

万が一忘れ物をしてしまってはいけないと念には念を入れ、あれこれ点検して右往左往している我々を見て、夫はどんなことを考えているのだろうと顔を見ると、たまたま目が合いました。いつもの『ニヤリ』が見えました。(このゆとり、この元気さがあればまず往きの旅には耐えられるな)と私も一安心いたしました。

新幹線組は、家を出発午後二時半なので、かなりゆとりがあります。ケアマネジャー、日本ALS協会広島県支部の竹畑さんと私の三人は、ホテルでの事前準備係なので、一足先に車で一時半に家を出発しました。

心配をした山陽道も、混む様子は全然なく(これではタクシーで来ても良かったかな)などと勝手なことを考えていました。一番気がかりだったお天気も、降ることもなくヤレヤレでした。