筋萎縮性側索硬化症患者の介護記録――踏み切った在宅介護

命の片道切符

『読売ジャイアンツ原辰徳監督に会いに行こうツアー』 二○一三 秋

(十)《介護の心》満載の介護タクシー

あっ、大事なことを忘れてしまい失礼いたしました。この度の原辰徳監督との面会は、広島でのデイゲーム終了後ということだったのです。

みなさまもご存知のようにわが広島県は広島市に『広島東洋カープ』という球団がございます。地域に根ざした球団であり、地域球団として県民の大きな応援があります。

当日の随行者のほとんどが、いやわが家族を除いた随行者百%のみなさんがカープファンだと思います。その筆頭が在宅主治医の角川先生です。それにもかかわらず、夫やわれわれ家族のために、このわがままを聞いてくださり本当に嬉しゅうございました。

当日の試合が十二対○で広島東洋カープの大勝利に終わったことが、せめてものわれわれ家族からのお礼と言えたでしょうか。(原辰徳監督、ごめんなさい)

この度のこの無謀とも言える計画は、こうして大勢のみなさまの温かな思い入れによってとても楽しい、夫にとっては忘れないであろう素晴らしい思い出作りとなりました。

疲れを見せることなく、これ以来テレビの野球観戦をより楽しんでいる夫を見るに付け、関係みなさまに心から『おかげさまでありがとうございました』という思いを込めて訪問主治医角川先生のお書きくださった、もしも様態が急変した時、先方の医師にお渡しすることになっていた『紹介状』をそっと思い出の中にしまいこみました。

これで『読売ジャイアンツ原辰徳監督に会いに行こうツアー二○一三』は夫の心のアルバムに大切にしまわれたことでしょう。

いつまで生かせたいですか。

わが家はそれぞれ仕事を持っていますので『家族だけの介護』は到底出来ません。そこで大勢のヘルパーさんたちのお力をいただいております。しかし、トイレは、ヘルパーさん一人では今は身体の自由が利かない夫を支えることが出来ない状態なのです。

一年前までは、夫はふんばって一人でも立っていられたのですが、今は一人ではとても立っていることはできません。誰かが少しでも支えていなくては、立っていることはとうていできません。