夜明け

ふと視線を転じると、まだ夜が明けきらぬ町並みが見える。この町は、結婚後に移り住んだ町だ。実家は田舎だった。実家では夜9時を過ぎての周囲の景色は街灯だけがまばらにまたたくだけで民家の明かりも乏しい景色だった。闇一色の景色といっても言い過ぎではなかった。

それに比べて、この町は華やかだ。24時間、周辺の店舗の明かりがあちこちにともり続ける。周辺には24時間営業のコンビニはもとより、スーパー、スポーツジム、飲食店などがあり、深夜帯まで営業する量販店、多種多様な店舗が国道沿いに乱立するため、食料品、電化製品、衣料品、生活雑貨などのほとんどすべてがいつでも徒歩圏内で揃うという立地環境にある。

おまけに内科、整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻科などの医療機関、ドラッグストアも徒歩圏内にあるすばらしく便利な地域環境だ。自分たちが高齢になり車を手放したとしても、最期まで歩いて何でも調達できる便利で恵まれた生活環境だ。

「こんなにも明るく便利な町だったのか」

と改めて思う。まるで不夜城だ。そういえば、この町に30年間住んでいるが、こんな風にして景色を見るのは「初めて」のことだ。そう言えば、「初めて」のことが毎日のように起こる。生活が一変したのだ。まるで生まれ変わったような毎日が過ぎていく。