不眠の正体

退職した後も、ふと気付くと仕事のこと、仲間のことばかり考えている。時を戻すことができるはずもなく、私自身が保健師統括として復職できるはずもない。けれど、いつも仕事のこと、保健師活動のこと、仲間のことが頭の中にある。

今更、何の懺悔かと思う。仲間に対する後ろめたさなのか、罪悪感なのか自分の不甲斐なさへの慙愧(ざんき)なのか。私が「保健師職を捨てた」というこの事実、そして仲間たちへの負い目は生涯、消えることはない。

それにしても、これほど眠れなくなったのは、一体いつ頃からだったのだろうか。眠れないのは、実はずっと昔からだ。私は、いわゆるショートスリーパーだった。

保健師になる前、私は大学病院で病棟看護師として働いていた。その頃の勤務体制は3交代制で、「日勤~深夜」というシフトがあった。朝8時半~夕方5時15分の日勤を終えた後、その日の夜12時~翌朝8時30分までを勤務するのだ。当時、私は20代前半だったけれど、そのシフトは結構ハードな勤務だった。

しかし当時の私は、大抵、深夜明けにはそのまま友達と遊びに出掛けたり、買い物や映画などに出掛けたり、まっすぐ家に帰って寝た記憶がほとんどない。もともとが眠らなくても大丈夫な体質だった。短時間の熟睡ができればエネルギーがフルにチャージされ、身体的にも精神的にもまた全力で次に向かって行ける、そんなエコノミーな体質だった。短時間であっても深く良質な眠りができる体質だったのだ。

それが一体、いつのまに、熟睡どころか、眠ることそのものができない体質になってしまったのか。そういえば、一週間もの間、「眠った」という実感がほとんどないまま過ごしたことがあった。あれは「平成30年7月豪雨災害」の被災地である岡山県に派遣保健師として赴いた時のことだ。今にして思えば、あの頃から「眠れない」前兆は現れていたのかもしれない。