▽IⅭⅮ‐10(国際疾病分類 International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems 第10版 )

IⅭⅮ‐10は疾病がコード化されるようになっており、現在保険診療請求時にもこのコードで請求することになっているので、保険診療の対象の病名(障害名)が網羅されていると考えてほぼ間違いではないと思います。その中で適応障害は、「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害」のグループの「重度のストレス反応および適応障害」に、急性ストレス反応、心的外傷後ストレス反応とともに記載されています。ここでは次のように説明されています。

適応障害 Adjustment disorders

主観的な苦悩と情緒障害の状態であり、通常社会的な機能と行為を妨げ、重大な生活の変化に対して、あるいはストレス性の生活上の出来事(重篤な身体疾患の存在あるいはその可能性も含む)の結果に対し順応が生じる時期に発生する。

ストレス因は(死別、分離体験によって)個人の人間関係網が乱されたり、あるいは社会的援助や価値のより広範な体系を侵したり(移住、亡命)することがある。ストレス因は個人ばかりでなく、その集団あるいは地域社会を巻き込むこともある。

…(中略)…症状は多彩であり、抑うつ気分、不安、心配(あるいはこれらの混合)、現状の中で対処し、計画したり続けることができないという感じ、および日課の遂行が少なからず障害されることが含まれる。…(中略)…発症は通常ストレス性の出来事、あるいは生活の変化が生じてか1カ月以内であり、症状の持続は蔓延性抑うつ反応の場合を除いて6カ月を超えない。

▽ⅮSM‐5(精神疾患の診断・統計マニュアル Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 第5版)

次に欠かせないのがDSMになりますが、これはアメリカ精神医学会から出された『精神疾患の診断・統計マニュアル』で第5版ということになります。マニュアルなので少し操作的なところもありますが、その疾患の分類はほぼICDと呼応しています。適応障害は「心的外傷およびストレス因関連障害群」の中にあり、要約しますと次のように説明されています。

適応障害 Adjustment Disorders

はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3カ月以内に情動面または行動面の症状が出現…(中略)…そのストレス因に不釣り合いな程度や強度を持つ著しい苦痛、社会的、職業的、またはほかの重要な領域における機能の重大な障害…(中略)…そのストレス因、またその結果がひとたび終結すると、症状がその後6カ月以上持続することはない。

これらをまとめますと、適応障害は、何らかの特定できる生活上の重大なストレス(死別などの分離体験、移住、亡命、がんなどの重篤的な疾患など)によって起こる多彩な精神症状であり、それらに見舞われ、比較的早期1~3カ月に出現し、ストレス状況がおさまると6カ月以上は持続しないもの、ということになります。(蛇足ですが、大きなくくりでⅠCDは「ストレス関連障害」で、DSMは「ストレス因関連障害群」です。「因」のあるなしは表記のままです)