【前回の記事を読む】多彩な精神症状が現れる…「適応障害」についての主な説明

第2章 適応障害についての主な説明

お気づきのことと思いますが、この「適応障害」でストレス因(原因となったストレス)と言っているものは、ドラスチックで重大な生活上の出来事です。現代の日本で、がんなどの宣告や重大なストレスとなるような死別や分離体験はあるかもしれませんが、移住や亡命などはまずありません。

昔「引越うつ病」と俗に言われるものがありましたが、引っ越した先に馴染めずうつ的になった状態を指していました。これは適応障害と言えると思いますが、多くは自分ではどうにもならない望まない転居でした。しかし新卒入社、就職はどうでしょう。少なくとも自分で希望し応募してきています。自分ではどうにもならない重大で過酷な運命にさらされるような体験とは少しニュアンスが違います。

そしてこれらの説明の中にないものが「身体症状」です。メンタルクリニックを訪れる若者の多く、ほぼすべてがまず身体症状を訴えます。腹痛、下痢、頭痛、めまい、吐き気などで仕事に行けないあるいは仕事ができないので、それを治してほしいと訴えます。そしてうつ的な気分、不眠、食欲不振、一人になると涙が出るなどを話します。どうも症状のタッチも違います。

私は「適応障害」について詳しく議論する立場にはありませんが、そのような病名(障害名)をいただく多くの若者がいるという事実はわかります。そしてこれらの診断基準とピタッと合っていないのではないかという印象に至りました。それでは次に、実際にどんな具合なのか見ていきましょう。