カツオのことだから、恐らく豆腐屋さんでは、

「今日は裏のおばあさんのおつかいです」

とちゃっかり宣伝。すると、

「カツオくん、えらいね~」

と豆腐屋さんのカツオに対する評価が上がります。他人に褒められるのは嬉しいものです。次に、サザエにおつかいを頼まれた時には、カツオは豆腐屋さんには進んで行くのではないでしょうか? 家の外側の第3者である豆腐屋さんが絡むことによって、カツオは家の中にいるよりも背伸びをして成長していくのです。

そう、「おつかい」とは子どもたちにとって、身の回りに自然と準備されていた貴重な成長の場であったに違いありません。

今日、子どもの「おつかい」という行為がほとんど見られなくなってしまいました。身近な個人商店が次々に閉店して行ったり、道路事情が子どもの独り歩きを許さなくなったなど、地域によって様々な原因が考えられますが、かつてのように、子どもがおつかいを担わなくても、問題なく家庭生活が営まれている状況になっていることには違いありません。

そのことは、家庭生活という面では特に問題がないようにも映るのですが、担っていた子どもたちにとって「貴重な成長の場が失われた」ということが見落とされているように思えてならないのです。

子どもたちに「育つ権利」・「参加する権利」を保障するには「おつかいに代わる挑戦の場」すなわち「第3者の目があるところで、大人と同じ行為に子どもが挑戦できる場」を意識して提供する必要があると私は思うのです。

次章では、「人は人に見られることで成長する」という事例を追っていきます。