第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-4 技術と法

3. 製造物責任法

製造物責任法は、日本においては1995年7月1日から施行されました。ProductLiability、略してPL法と呼ばれます。目的は、「製品の欠陥が原因で生命や身体や財産に被害が生じたとき、製品の製造者が被害者に対して負う賠償責任」です。その大きな特徴は、「無過失責任」だということです。

つまり、製造者に故意や過失があったかどうかにかかわりなく、結果(欠陥)に対して製造者が責任を持つということです。民法のなかの「不法行為責任」では、受け取った商品に欠陥があって消費者が被害を受けた場合、その賠償をしてもらうためには、製造者に過失があったことを被害者側が立証しなければなりませんでした。しかし、専門的な知識もない被害者が、製造者に過失があることを立証するのは容易なことではありません。

そこで、過失があったかどうかにかかわらず、欠陥による被害があった場合には、製造者による被害者への賠償を実現するようにしたものです。「過失」とは、必要な注意を怠ることです。被害の発生を防ぐような一定の行為を怠ったことが過失になります。

一方、「欠陥」とは、製造物の通常の使用形態において有すべき安全性を欠いていることです。したがって、通常の使用形態でない使い方をすることは問題が異なります。

包丁を例に見てみましょう。包丁を人に向かって振り回した場合、これは通常の使用形態ではありませんので、それによって被害が生じても包丁に「欠陥」があることにはなりません。

しかし、包丁を使ってまな板の上で野菜を切っていて包丁の刃が簡単に折れて手にけがをしたら、その包丁には「欠陥」があったということになるでしょう。「欠陥」には「製造上の欠陥」、「設計上の欠陥」、「指示・警告上の欠陥」があります。

このうち「指示・警告上の欠陥」とは、危険を予防ないし回避するための指示や警告に不備があることです。したがって、製造物責任法が施行されて以後、商品の取扱い説明書の冒頭にはその商品の使い方の説明ではなく、「してはならないこと」、「危険」について詳しく書かれるようになりました。

メーカーにとっては、まず「してはならないこと」を宣言しておいて、そのような行為による被害はメーカー側の責任ではないことを示したいからです。残念ながら消費者にとっては、すぐに使い方を知りたいのにやってはいけないことばかりが最初に書いてあるので、不便を感じるようになりました。しかし、このような事情があることを消費者も理解しなければならないということでしょう。

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。