第二章 初めて抱く不思議な気持ち

「沙優、金ないと言っていたな、これで必要なものを買え」

彼はカードを差し出した。

「そんなこと出来ません」

「しかし、冷蔵庫には何もないし、困るだろう」

そう言って彼は私の手にカードを握らせた。

「では、仕事見つかったらお返しします」

「いや、沙優はしばらく働かなくていい。俺の婚約者が働いているのは、世間体があまり良くないからな」

「でも……」

彼は私を引き寄せ見つめた。

「沙優は俺を信じて付いてくればいい、わかったな」

「はい」

世間体が良くないと言われれば、彼に恥をかかせるわけにもいかないから、素直に従った。彼には彼女がいる、私はあくまでも婚約者の振りをするように頼まれただけ。でも彼は凄く優しい。抱きしめてキスされると、婚約者だから構わないと言われても、愛されていると錯覚してしまう。

私は彼に助けて貰った時から惹かれていた。でも好きになってはいけない人と、自分に言い聞かせた。

しかし、今の私は彼に頼るしか生きていく術がなかった。なるべく彼に迷惑をかけないようにしなくちゃと心に誓った。

「今日は俺の分の飯はいらない」

「分かりました」

彼は仕事に出かけた。