第六章 大好きな気持ち

俺は仕事が終わると、沙優の待つマンションに急いだ。沙優との生活はとても居心地がいい。今日は彼女との別れをちゃんと伝えて、俺の気持ちを打ち明けようと決心していた。

「ただいま、沙優」

部屋が暗い、どこに行ったんだ。スマホを確認するが、沙優からのメッセージは無い。

「沙優?」

沙優の部屋を覗いて俺は愕然とした。荷物が片付けられて、メモがあった。

《南條さん、ご結婚おめでとうございます。良かったですね、彼女さんがその気になってくれて。南條さんにあの雨の日、助けて貰わなければ、私はこの世に居なかったかもしれません。とても感謝しています。

圭人が亡くなって五年、生きてるのか、死んでるのか、分からない生活を送ってきました。でも南條さんと巡り合えて、とても優しくして頂き、嬉しかったです。ありがとうございました。これからは彼女さんを大切にしてあげてくださいね。最後なんでずっと心に秘めていた気持ち言っちゃいます。南條さんが大好きです》

沙優、どういうことだ、まさか華菜がここに来て結婚すると沙優に言ったってことか。だから、沙優は出て行ったのか。俺はスマホで沙優に連絡した。しかし、沙優のスマホは電源が入っていなかった。

どこに行ったんだ、今晩泊まるところもないのに、カードも置いてあるんじゃ、全く金を所持してないってことか。俺は秘書の金子に連絡を入れた。沙優の行方を探すため休みをとった。俺は血眼(ちまなこ)になって、沙優の行方を探した。でも見つけることが出来なかった。

しばらくして華菜が俺のマンションにやってきた。

「貢、秘書の金子さんに聞いたんだけど、婚約者の行方が分からないんだって」

「白々しい嘘つくな、華菜、お前沙優に何を言ったんだ」

「何って、本当のことを言っただけよ」

「本当のことだと、俺達が結婚することが、本当のことなのか」

俺は相当頭に血が上り、華菜を責めた。

「カモフラージュなんでしょ、問題ないじゃない」

「俺は本気だ」

華菜は許せないと言わんばかりに、俺を睨みつけた。

「男のところでも行ったんじゃないかしら」

俺はハッと気づいた。もしや圭人の墓に行ったのか。俺はまさかと思ったが、心配になり、圭人の墓に向かった。

「貢、どこに行くの」