【前回の記事を読む】「何気ない一言は自分への批判にしか聞こえない」毒親に育てられた娘の苦悩

毒親から逃れる──心理的な距離を目指して

2.自信のなさがどんどん自分を追い詰めていく

「叱られたり邪険にされたりするのは慣れているはずなのに、人の優しさを覚えてしまうと、優しさが欲しくて欲しくてたまらなくなり、文章の句読点の位置を直されたり、コピーの向きを変えるように言われたりするだけで、自分が否定されるような、おまえはやっぱり駄目だなと言われているような、そんな極端な気持ちが湧いてきてしまうんです。優しい言葉で、それでいいよ、よくやったねと声をかけてもらえないことが、ものすごい苦痛に思えてくるんです。

声をかけてほしい、優しく声をかけてほしい、と人の顔色ばかり窺い、どうしたら優しくしてもらえるかばかり気にして、何を頼まれてもノーと言えず、何を話しかけられてもすぐに返事ができないようになってしまいました。あっという間に追い詰められた、ということです」

「わたしは大学でも、先生が言うように何かできていたわけではないんです。厳しくされて人の言うままに動くしか能のない人間だっただけです。それも本当はやらなくちゃいけないからやっていただけと思います。やらないと居場所がなくなるから、やったらほめてもらえるかもしれないから、だからやっていただけだと思います」

「会社では、上司の指示も先輩のアドバイスも、わたしのできないことを突っついているだけに聞こえて、どれもすごく負担でした。みんなわたしのことを考えて親切にしてくれていたのに、わたしは心が曲がっているから、わたしをいつもほめてくれないというだけで、そういう風にしか思えなくなったんです。人のことを悪く思うことしかできないんです。だからぼろが出てしまったんです」