2章 第一の関門――筆記試験への挑戦

10 保育実習理論

「保育実習理論」の勉強の工夫

筆記試験の最終科目、九科目目は「保育実習理論」である。筆記試験の一科目目から八科目目までは、保育士が保育に必要な各分野での知識や理論を理解しているかが試されたが、保育実習では、それらの知識や理論を保育の現場で実践し、活用できるかが問われる。

具体的には、試験に出題されるのは、保育所などの役割りや機能、保育士の職業倫理、保育計画(保育課程・指導計画)などである。これらはきちんと勉強すれば、何とかなる。

問題は三つの保育技術、つまり音楽表現に関する技術、造形表現に関する技術、言語表現に関する技術をきちんと習得しているか、が問われる。現実には、この三つの技術をすべて得意にしている人は少ないと思われる。

正直言って、私は音楽が苦手で、楽譜も読めないし、ピアノなどの楽器もできない。楽器を弾ける人や音大を出た人なら楽勝だろうが、私にとっては九科目の中で最大の難関であった。でもここで降りるわけにはいかない。やるっきゃないのである。

保育実習理論とは

厚生労働省による「指定保育士養成施設の指定及び運営の基準について」では、次のように保育実習について言及している。

「保育実習は、その習得した教科全体の知識、技能を基礎とし、これらを総合的に実践する応用能力を養うため、児童に対する理解を通じて保育の理論と実践の関係について習熟させることを目的とする。」

本来なら、保育実習は保育施設での実習であるべきであろうが、保育士試験では保育所などでの実習の義務は課せられていない。保育実習理論の中ではあくまで保育実習の理論を理解しているかが問われ、後日の実技試験で三つの保育技術が試される。

いろいろな保育記録保育所では保育士が、保育の計画(保育課程や指導計画など)とは別に保育に関する情報を整理し記録している。例えば、おたより帳、保育所だより、保育日誌、児童票、保育要録、事故簿などである。

「おたより帳」とは連絡帳ともいう。保育士と保護者が子どもの保育および成長に関する情報共有の手帳である。私の担当する組では、朝保護者から、おたより帳を受け取り、保護者からのメッセージや子どもの体温などの情報を確認する。

また保育士は、保育所での子どもに関する情報をおたより帳に書き込み、その日に保護者が読めるようにお返しする。子どもの保育状況についての交換日記のようなものである。私も極力、その日にあった出来事や子どもの成長につながることを書くようにしていて、翌日に保護者から反応があるとうれしくなる。

私の勤務する保育所では現在タブレットにおたより帳を入力し、保護者も自分のスマホなどで確認や入力ができるシステムの導入を計画している、システム化を進めることは良いことであるが、タブレットが一人一台あることが前提である。もし数人に一台のタブレットでは、待ち時間ができ、逆に生産性は紙よりも悪くなる。

「保育所だより」は保護者向けに、保育所共通の情報と、組別の情報を紙で印刷し、原則として月一回配布する。そこには、毎月の行事の案内や感染症対策などの情報、組別のニュースなどが網羅される。

「保育日誌」は保育士が毎日、組別の出欠状況、その日の活動内容・ねらいや結果評価を記入する。私の担当する組では、主担任の保育士と副担任の私とで隔週で交互に記入している。(現在はタブレット使用)。

「児童票」とは子どもの基本情報にその成長・発達に関する記録を追加していく。その記入の頻度は月一回か三カ月に一回が多い。

「保育要録」は、保育所児童保育要録のことで、保育所児童が小学校に入学する時に、保育所から該当の小学校に送付される資料である。基本的には保育所の子ども一人ひとりについて保育における養護と教育の五領域(健康、人間関係、環境、言葉、表現)の視点で、該当の子どもの成長・発達の記録が記載される。

「事故簿」は保育中の事故の報告書、または事故にはならなかったが、「ヒヤリハット報告書」である。両者を同じ報告書に書く保育所もあれば、別の報告書にしている保育所もある。

その際は、5W1Hを意識して明確に報告する必要がある。つまり、いつ、どこで、だれが、どんな状態で、どうなったか、保育士の対応、保護者の反応などである。当然、事故の起きた原因と再発防止策が大事になり、保育所全体での情報共有が求められる。次の記事は、保育所のさゆに塩素が混入していたというとんでもない事故(事件)である。

以上の保育記録を書く場合には、個人情報の取り扱いには気を付ける。

東京・江東区の保育園で、さゆから高濃度塩素 緊急保護者会
ホウドウキョク 二〇一六年一二月二三日

東京・江東区の保育園で、園児が飲んださゆから、高濃度の塩素が検出された問題で、緊急の保護者会が行われた。

保護者会には、78人の保護者が参加し、経緯が説明されたほか、今後は飲み物も、職員が試飲するなどの再発防止策が示された。

高濃度の塩素が検出された、コップに入ったさゆの塩素については、保健所が検査したが、ポットや、やかんの検査はせず、保育園がさゆを捨てたため、塩素の特定はできないという。

参加した保護者は、「これ以上、何も証明できないじゃないというのはショック」と話した。園児に、さゆを飲ませたあと、塩素が検出されたコップからだけでなく、ポットからも塩素のにおいがしたと保育士が話していることが、新たにわかった。

※本記事は、2018年8月刊行の書籍『じーじ、65歳で保育士になったよ』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。