牧師さんはなかなか戻ってこなかった。そのうち、柱時計が八時を知らせた。牧師さんが寝室を出ていって十分が経っていた。まだ戻ってこない。奥さんが身体をヒクヒクと反転させた時に、誰かが部屋をノックした。これがカトリーヌだった。倒れている奥さんを見て、カトリーヌは立ちすくんだまましばらく動けなかったが、僕の二回の瞬きと同時に寝室から急いで出ていった。あとはカトリーヌが僕に話した通りだ。カトリーヌは錯覚し…
[連載]カトリーヌと囁き森
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第15回】智佳子 サガン
家から兄さんがいなくなり私は毎日泣きました。六十年の時を越えて届いた一通の手紙
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第14回】智佳子 サガン
牧師の奥さんが死んだのは「未必の故意」!? 真実を知るのは…
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第13回】智佳子 サガン
天罰が下った牧師の奥さん。不幸中の幸い、島を出るのが延期に
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第12回】智佳子 サガン
母を殺された少女が心に決めた復讐。あの夫妻を許すことはできない。
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第11回】智佳子 サガン
ワルツから語られる真実…カトリーヌの母、アンジェの秘密とは
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第10回】智佳子 サガン
「あんたの父親はどこの誰かわからないっていうじゃないか」と水の中に放り投げられた本
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第9回】智佳子 サガン
「あなたは本を読む資格などないのよ」本屋で牧師夫妻はカトリーヌと母親を馬鹿にして…。
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第8回】智佳子 サガン
「わしはあの子は牧師夫妻に可愛いがられていないように見える」
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第7回】智佳子 サガン
猫の僕だけに語られた本音…「私にはやらなきゃいけないことがある」
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第6回】智佳子 サガン
奇病にかかった夫人に「きっと役に立つ」、きれいな一冊の本
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第5回】智佳子 サガン
【小説】島の真ん中にある「黒い森」人々はここを恐れるけれど…
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第4回】智佳子 サガン
いつもの鼻歌が聞こえない…ワルツさんが不機嫌な理由は「赤い蝋引きの手紙」
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第3回】智佳子 サガン
悲しみで「荒涼とした冬の海のような瞳」をした若者が探し求める本とは
-
小説『カトリーヌと囁き森』【第2回】智佳子 サガン
【小説】「僕は不吉な猫だ」猫のリュシアンの悲しい過去
-
小説『カトリーヌと囁き森』【新連載】智佳子 サガン
【小説】朽ちかけた木造りの本屋の主人は風変わりなおじいさん