中部地区の普通科高校

研究と修養(3) ~文部省専門委員を3期務める~

先に触れた都の開発委員を契機として、教育委員会の担当指導主事の推薦もあって、文部省(現・文部科学省)の専門委員を務めることとなった。

千代田区霞が関にある文部省の本庁舎へ月1回のペースで身分証明書を携行し出張した。何の専門委員かというと、大学入学検定試験〈注1〉、いわゆる「大検」の問題作成委員のことで、私は3期務めた。

私は冒頭で、都会の教師になりたくて東京都を受験した、と述べている。まさに首都東京のど真ん中、霞が関の文部省で専門委員として働いている自分がそこにいた。“田舎教師”ではなく、“都会の教師”の具現化がそこにあった。そして、委員会終了後の“アフター5”がとても貴重な時間であった。担当の視学官や教科調査官、他県の教員との付き合いがとてもいい刺激となり、また人的交流の幅を広げることにもつながった。

おまけ

ところで、文部省の本庁舎は昭和8年に大蔵省営繕管財局の設計で建てられたもので、中庭をぐるりと取り囲む独特な構造になっていた。

最初は物珍しさから、早めに行って、庁内を“散歩”して歩いたことがあった。廊下はうす暗く、あちこちに段ボールが山積みされていた。威風ある外観とは真逆で、そのギャップが激しかった。そうした内側の雑然とした中で、ある一角だけ深紅の絨毯が敷き詰められたエリアがあった。それこそが大臣や事務次官・局長などのいわゆる高級官僚がいるところであった。まさに“異空間”とはこのことなり。


〈注1〉「大学入学資格検定」

2004(平成16)年度以前に実施されていた資格検定。大学へ入学する際の学力の有無を判定し、合格者は高校卒業と同等の資格が得られる国家試験。通称「大検」。2006(平成17)年度より「高等学校卒業程度認定試験(高認)」に移行。(出典:『ウィキペディア』より「大学入学資格検定」 https://ja.wikipedia.org/wiki/ 2020年5月17日〈日〉16:30 一部参照)