校長任用前研修 ~印象に残る「模擬交渉」~

前述したように、私は前任校で校長選考に合格していたため、この学校で2年間の任用前の研修を受けることになっていた。

月1回程度、教職員研修センターが主催する研修を受講し、任用審査のための論文と面接を受け、それが「適格」となると校長昇任の“切符”を手にすることとなる。ただし、その年度の退職状況によっては、2年を待たずに、昇任となるケースもある。

また任用審査で「不適格」となり、昇任が1、2年遅れた仲間もいる。さて、研修の中で特に印象に残っているのは、職員団体いわゆる組合との団体交渉を想定してのロールプレイである。

すなわち、職員団体の幹部役になる者と、当局としての校長役、そしてそれらの取り巻きのいる中で、「模擬交渉」を行うというものである。時に、熱を帯びて、“本当の交渉”というか“本当の喧嘩”が始まってしまうケースもあった。

研修でエキサイトするなんてことは、これまでなかったため、特に印象に残っている。

管理職としての危機管理 ~学校泊まり込みで臨戦態勢~

台風や大雪が近づくと、万一のことを考えて、私は学校に泊まり込むことにしていた。理由は、交通機関がストップして職場に辿り着けなかったら、学校の機能がマヒしてしまうからだ。

そして、こうした場合に、陣頭指揮を執るのは校長ではなく、副校長の務めと考えていたからだ。副校長というものは、いついかなる時も、常に“前線”にいなければならない存在なのである。

ちなみに、寝る所は、保健室のベッドと決めていた。また、例年11月は都労連のストが予定されていた。私は副校長として、いつストライキが決行されようとも、万全の態勢を敷いて当日を迎えられるようにしていた。

まずは、職員団体の加入状況から非組の教員を割り出し、生徒の出欠管理や自習の指示を誰にお願いするかを一覧表にして作成。万一のために補助要員を誰に指示するか、ストに参加した者のチェックはどうするかなど、綿密にシミュレーションしていた。

「ストよ! かかってくるなら、どこからでも来い!!」という心づもりで臨戦態勢をとっていた。

まさに「備えあれば憂いなし」である。