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写真撮影を介して親を知る「有終写真」

八〇歳代の男性を撮影したときの話です。一カ月前に奥さんを亡くしたところであったため、自然と話はご夫婦の関係に及びました。

「どんな奥様だったのですか?」と相葉さんが尋ねると、「そりゃあ厳しかった」とひとこと。それから、妻がいかに厳しかったかというエピソードを次々に語ったのだそうです。同席していた息子夫婦は初耳のエピソードばかりで、母親には父親に対してそんなに厳しい側面があったのかと驚いたそうです。

一方、それを聞いた孫は「おじいちゃんは優しいけど、おばあちゃんは怖かった」と発言し、その場は大爆笑。このひとときで、男性の心は幾分か軽くなったのではないかと想像できます。

最後に、写真に入れる「大切な人へのメッセージを書いてください」とペンを渡すと、「後はヨロシク」と書いたそうです。誰もが妻への思いを書くだろうとしみじみしていた中で書かれた、あっさりとした息子夫婦へのメッセージに家族も相葉さんも泣き笑い。息子夫婦の泣き笑いはきっと、親の人生や今の心境に深く触れることができた感激からだったのだろうと想像します。

家族にはお互いに知らないことがたくさんあります。だからこそ、意識的に相互理解を深める機会を作っていくべきではないかと思います。その際、家族だけでは煮詰まってしまうケースが多く、他人が介在したほうが話がスムーズに進む、あるいは考えるきっかけが得られることがあります。

有終写真という機会は、写真撮影という場や、第三者による上手な問い掛け(質問や傾聴の姿勢・スキル)によって親子の深い対話を発生させており、高齢の親に対する子の理解不足を解決するためのヒントを与えてくれます。

先の八〇歳代の男性は、配偶者を亡くして、これからは少し寄りかからせてほしいという気持ちの表明ができ、息子夫婦はそれを受け入れる、非常によい機会になったのではないかと思います。