駅前交番に直行し、ヤクザに引きずり回されてお金を巻き上げられたと全部話した。制服を着たお巡りさんを見て安心したためか、涙が出てきて、情けなくもシクシク泣きながら事の詳細を伝えた。

交番のお巡りさんは僕にお茶を出してくれ、もう一人のお巡りさんは静岡県警に電話していた。しばらくすると県警の警官が来て、

「本署で話を聞くから車に乗ってください」

と言われ県警に向かった。生活安全課というところで同じことを話し、大男が持っていたタバコの空き箱や銀行のATMカードなど関わったと思われる物は全て証拠品として提出した。僕の指紋も写真も撮られた。警察で写真を撮られるのも2回目だなと思いながら被害届の調書を書いてもらった。

担当の警官は、

「そいつはヤクザじゃないな。業界ではナガレって言って、各地を転々としながら君みたいな人からお金巻き上げるんだよ」

と教えてくれた。警官は僕の免許証を見ながら、

「君、神奈川県のA市在住? なんで静岡に来ていたの?」

と聴いてきたので、彼女が静岡にいて会いに来たことを伝えると、

「じゃあ、彼女を引受人にするか」

とTさんの職場に電話をかけた。

それから30分くらい経ったか、Tさんが迎えに来て警察を後にした。彼女の家に着き、僕は実家や職場に今日のことを説明した。

消費者金融のお金はすぐにTさんが立て替えて返済してくれたが、生活費や家賃は実家から借りた。大男のヤクザもどきについては、母の姉の親戚の大阪府警の警視正が、この出来事に関して静岡県警の署長さんに話を付けて捜査することになった。

でも、そんな簡単に捕まるわけはなく、7年後に静岡県警に事件のことを電話照会してもらうと、

「時効成立です。申しわけありません」

ということでこの件は幕を閉じた。この事件について、読んでいる方は

「いつでも逃げだせたのではないか?」

と思われるだろうが、警察でそのとき言われたのは、ナガレはそういう手口を使いマインドコントロールするのが上手いんだそうだ。

確かに逃げ出そうと思えばできたように、あとからは思うけれど、あのときは恐怖と「ヤクザ」という言葉の暗示に襲われていた。大男の思う壺だったのだ。

とにかく、

「60万円返してくれ!」

そう叫びたいよ。トホホ。

※本記事は、2020年9月刊行の書籍『僕は不真面目難病患者 ~それでも今日を生きている~』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。