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失踪と大怪我

僕がA障害者施設の地域サービス課に配属されたときのことだ。

施設が運営母体となって地域にグループホームを何軒かつくっていた。そのグループホームに住んでいる利用者さんは、日中はA障害者施設に来て作業室で作業をして夕方になるとグループホームに戻るという生活をしている。

グループホームには職員の宿直が必要で、A障害者施設の管理職と地域サービス課の職員が毎日交代で宿直をする。ホーム宿直者は夕ご飯を利用者さんと食べた後に、希望の声があれば、ちょっとした買い物に車で出かけることがある。そんな買い物をするために外出をしたとき、女性利用者さん4人、男性利用者さん3人で行った。そのなかの一人が、

「音楽テープを買いたいから見てくる」

というので、僕はその人に「後で来るね」と伝え、ほかの6人に付き添った。6人の買い物は順調に終わり、一人残した利用者さんを迎えに行ったが、彼はお目当ての音楽テープがなくひどく落ち込んでいた。

「仕方ないね。今日はもうかなり時間遅いし、また今度にしようか?」

と僕は彼に伝えた。彼は「わかった」とは言わなかったけれど、先に2人で車に一緒に戻った。ほかの利用者さんも迎えに行かなければならない僕は彼に、

「車のなかで待っていてね。他の方を迎えに行くから」

と言い残してその場を後にした。売り場に戻るとまだ買い物をしていた利用者さんがいて、終わるのを待ち急いで車に戻ったが、待っているはずの彼がいないのだ。

また音楽テープでも見に行ったのかなと思い、お店を探したけれど見当たらない。ほかの店舗も見回したが、やはりいない。どこにもいないのだ。

「どこへ行ったんだ?」

辺りを探すもまったくわからず、1時間くらい探したが、車で待っている利用者さんから「早くホームに戻りたい」との声が上がる。仕方ない、施設職員と非番の職員に捜索応援を頼むかと、携帯電話で状況を話し、捜索してもらうと同時に僕はホームの利用者さんを送り届け、再び彼がいなくなった場所に戻る。