発病篇

46歳の僕は毎朝、起きたらベランダを開けタバコを吸う。遠くの空で朝日が昇る。とても綺麗だ。でも、僕は太陽に当たれない。それを35年続けている。そう、ずっと。太陽と僕と、そんな話をしよう。

【前駆症状】はじまり

夏休み。僕の学校では、プールを開放してプール教室が開かれることになっていた。僕は内心、学校のプールで習わなくてもマンションの中庭にデカいプールがあるんだから、そこで泳いでいれば十分ではないかと思っていた。

学校のプールは入るのに体温チェックをしなきゃならない。体温を測ると37.6度。2日目37.5度、3日目も同様に微熱が続いた。母親は不思議がった。「風邪でもないのにねー、おかしいねー」と。風邪の症状もない。何か身体が怠くなりやすい状態であったのは確かだけど、日常に差し障りはなかったので僕は普通に生活していた。

こういった症状を不明熱という。不明熱の三大原因は、癌、肺炎、膠原(こうげん)病。これは後に知ることになるが、初期症状の微熱はSLEの症状としてとてもポピュラーではある。しかし、微熱ゆえにこれがSLEとは医者もわかりづらい。微熱症状はSLEの診断基準の一つでしかない。

SLE。日本語でいうと全身性エリテマトーデス。膠原病の代表的な疾患の一つで、本来自分自身を守るはずの免疫系が体を攻撃し、全身の皮膚や関節はもちろん、筋肉や血管で炎症が発生する病気だ。厚生労働省によって指定難病にも定められていて、日本全国で約6万人の方が申請をして治療を受けている。このSLEが僕に襲いかかってきた。