PART6

2019年6月

ウイルソンから数日LINEが来なかった。LINEが日課になっているので、数日でも彼からLINEが来ない時は、彼に何か起きたのかと心配になる。

心配が続く中、ウイルソンから数日振りにLINEがきた。彼はその数日間の出来事をわたしに話してくれた。

彼が泊まっているホテルに、警察が来て、彼は逮捕された。

Brianの返済金未払いの件でBrianはウイルソンを訴えた。Brianと病院長は知り合い。病院長もウイルソンの治療費未払いの件でBrianと一緒にウイルソンを訴えた。数日間、彼は警察の取り調べを受けた。それでわたしにLINEが出来なかった。

Brianに$3,000返済するまではこの先も彼は警察監視の下に置かれる。すでに、彼の所持品は全部警察に取り上げられた。iPhoneは必要な時だけ監視の下で使わせてくれる。

ウイルソンは戻る場所が無くなって、逮捕されてからは留置所が彼の居場所になった。警察から出される食べ物は1日1回。少しの量。食事不足と疲労、そしてまだ彼は治療が必要なほど弱ってるせいからなのか、彼から送られてきた写真は彼の顔半分が黒アザになっている。

さらにウイルソンは伝えてくる。留置場まで、毎日病院長とBrianが彼の様子を見に来る。

Brianは$3,000今すぐ返せ!と相当怒っている。テルヨに振り込んでもらえ!とBrianは自分の口座をウイルソンに伝えた。

病院長の時と同じように、ウイルソンは$3,000をBrianの口座に振り込むようにとわたしに頼んできた。わたしはウイルソンの返済金額$3,000(約31万円)をBrianの口座に振り込んだ。

しばらくして、ウイルソンはBrianの口座に$3,000がまだ振り込まれてない事をわたしに知らせてきた。わたしは銀行に行って確認した。

銀行いわく、Brianの口座番号とBrianの名前が一致しないから振り込んだお金はBrianの方の銀行で保留されているとのこと。Brianの口座には入らない。そののち$3,000はわたしの口座に戻された。

ウイルソンはわたしのことを自分の女房だと、周りにも言っている。病院長は、何で女房が亭主を助けられない!とわたしに立腹している。

病院長はLINEの中に真っ赤な怒りのスタンプを付けてわたしに送ってきた。ウイルソンは留置されている間、そうとうな屈辱を周りから受けていると伝えてきた。

もう耐えられない! 死んだ方がマシだ!

彼の返済金をどうやって振り込んだら良いのか分からない。ある時ウイルソンから知らせがきた。なんだかいつもと違う彼の様子。LINEからでも伝わってくる。

彼が言うには知らない女性が僕を助けてくれた。その人がBrianの返済金を僕の代わりにBrianに返してくれた。僕がBrianと警察から出たところをその人は僕に声をかけてきた。

彼女に事情を話したら、その人はその場で近くの銀行に行って$3,000をBrianに返金してくれた。テルヨのこともその人に話した。テルヨのLINE IDをその人に教えたから、彼女からテルヨにLINEがいくと思う。

早速その女性からLINEが来た。

わたしはサカシタヨウコといいます。イスタンブールに住んでます。わたしはウイルソンを助けました。ウイルソンがBrianと一緒に警察署から出て来たところを見かけてウイルソンに声をかけました。それで彼に事情を聞きました。

わたしはひと目ウイルソンを見た時から彼を好きになりました。彼はシリアを出てからのことをわたしに話してくれました。テルヨさんの話もしました。Brianにお金を借りたいきさつも話してくれました。

わたしはその場で近くの銀行からお金を引き出して、彼の代わりにBrianに$3,000を返済しました。ウイルソンは彼のLINE IDとメールアドレスをわたしにくれて、その足で病院に行きました。見たところ、彼はそうとう弱ってました。

ヨウコはさらに続けた。

ウイルソンに他にもお金が要るなら貸しますよ、と聞いたら彼は遠慮しました。病院の治療が終わったら私の家に来ませんか?とウイルソンに尋ねました。彼はあとでわたしにLINEしますと約束して、その足ですぐ病院に行きました。

次のLINEでヨウコは言った。