ウイルソンからはLINEも来ない。メールも来ない。彼は冷たい。助けてあげたのに。

―女が知らない男を助けるのは"その男を気に入った"。往々にしてそんなところ。

ウイルソンが言うにはサカシタヨウコから彼女の家に来ないかと誘われたけど、行けばテルヨを裏切るようで遠慮した。ヨウコはわたしに自分の心情を訴えてきた。

わたしはウイルソンをひと目見た時、運命の人だと感じた。彼と一生共にしたいと思った。

I want to rest together with Wilson forever!

ヨウコは更に言う。

ウイルソンは未だにわたしにメールもLINEもしてこない。テルヨさんはまだウイルソンと会ったことないんでしょ、だったらウイルソンのこと忘れてください!

でもヨウコにはウイルソンからメールもLINEも来ない。ヨウコはウイルソンが自分に気がないことを知った時、わたしにBrianに肩代わりした$3,000の要求をしてきた。

今すぐ返してほしい! ウイルソンの代わりに、と。

そしてヨウコはある事を決行すると言う。

明日は日曜日で会社休みだから街中ウイルソンを探し回ってやる! 絶対探し出してやる!

彼女は完全にストーカーだ。ウイルソンは性悪な女に出会った。ウイルソンを助けた様で、実際は助けたわけではない。次の日ヨウコが言うには昨日はウイルソンを探し出すことが出来なかった。

絶対見つけ出してやる! イスタンブールからウイルソンを出られなくしてやる。出ればテルヨさんと会うから。彼をテルヨさんと会わせたくない!

ある日突然ヨウコはわたしにビデオ電話をしてきた。彼女は無言で薄ら笑いしてる……ただそれだけ。

次のLINEでテルヨさんは

ブス! 若くない! 奇麗じゃない!

と、わたしに浴びせた。

数日後、ウイルソンがLINE電話をしてきた。空港に行ったところをヨウコに捕まった。彼女は男と一緒だった。ヨウコは$3,000をすぐ返済することをウイルソンに約束させた。そしてウイルソンはヨウコへの返済をわたしに頼んできた。

電話の向こうで彼は男泣きしていた。ウイルソンからの指示による送金先はWalmart to Walmartの個人宛の口座。他人に自分の口座を貸す事を商売にしてる人が持っている口座。送金額の数パーセントを口座貸し主に手数料として支払う。

Walmart to Walmartの決まリは1日に振り込める最高限度額は$2,500。最初の送金は$2,000が最高限度額。

わたしはウイルソンの指示どおり、2日に分けてそれぞれ$1,500(約16万円)を振り込んだ。

※本記事は、2021年8月刊行の書籍『愛の対価―the dance of blind love―』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。