第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-1 社会における技術の役割

コラム④ 宇宙開発の最大の成果

私の子供のころの夢はロケット技術者になることでした。宇宙の開拓はとても夢があって、すばらしいことだと思ったからです。しかし、宇宙開発の最大の成果は、地球そのものが宇宙を飛行している、人類に最も適した「宇宙船」だとわかったことではないでしょうか。

地球自身が大きな一つの宇宙船であり、そのなかに人類が暮らしているということを認識すれば、自分たちが住んでいるこの宇宙船を大事にし、いかに快適にしていくかということに心を注ぐはずです。

学生に、将来の宇宙開発に期待することについて聞くと、「資源のある星に移住すること」など、地球から飛び出すことを期待する声がよく出てくるのですが、人類が乗って飛んでいる宇宙船が地球であることを自覚すれば、この宇宙船をいかに快適にしていくかを考えることが改めて大事だと思うのではないでしょうか。

壮大な宇宙開発として実施されたのが、人類を月に到達させたアポロ計画です。1969年にアポロ11号が月面着陸したとき、私は中学生でした。

次から次へと宇宙への開拓が進むことに心が湧き踊りました。しかし、一方で、「これは壮大な打ち上げ花火だ」、「予算の無駄遣いだ」という批判もありました。中学生ながら私が思ったのは、「宇宙開発に無駄なお金を使っているというが、もっと無駄なお金をベトナム戦争に使っているではないか」という疑問でした。

私の記憶では、アポロ計画に使った予算は当時のお金で8兆円であり、日本の国家予算の全額に相当しました。一方、ベトナムには兵士50万人を投入していました。宇宙開発競争も、ベトナム戦争も、冷戦時代のソ連との間の覇権争いの一環ではあったのですが、人類の夢を育てるものに技術を使いたいものだと思います。
 

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。