第Ⅱ部 人間と社会における技術の役割

Ⅱ-1 社会における技術の役割

7. 国家戦略としての技術

最後に国家戦略としての技術に触れます。図表1に主なものを示します。

まず、多くの国で軍事技術が防衛政策として採用されています。軍事技術は、国同士の対立が収束しないうちは手放せないものになっていますが、核兵器をはじめとする軍事技術の際限のない拡大は、結局は人類が地球のなかで安全に暮らしていく上で最大の脅威になってしまうのではないでしょうか。この問題の解決は人類の未来にとって、とても大きな課題です。

宇宙開発は、ロケットが国境を越えて地球上を飛び回るものなので、平和的な利用としても、軍事的な利用としても、大きな国家政策の一環となっています。アメリカとソ連による宇宙開発競争は、ミサイル開発および国威発揚の一環としても推進されました。

国は科学技術政策を掲げて進めています。詳しくはⅡ-5で触れますが、アメリカもドイツも日本も中国も、それぞれ科学技術の振興を国の重要政策として掲げています。

写真を拡大 [図表1] 国家戦略の手段

科学技術政策とも絡みますが、重点的に産業を振興して、国として経済成長、国際競争力強化、生活向上を図る手段としています。

エネルギー戦略は、国の産業・科学技術政策のなかでも重要な位置付けとなっています。日本は自国内に石油の産出がほとんどないため、海外からの石油の輸入に頼っています。1960年代前半までは石炭をエネルギー資源の中心に置いていましたが、炭鉱の採掘が難しくなり、液体燃料への転換も石油が容易なため、石油依存に転換しました。

また電力については、1960年代後半から原子力発電を推進する政策を進めました。1972年のオイルショックが生じたころには、太陽熱などの自然エネルギーの活用が政策に取り入れられた時期もありましたが、一貫して原子力発電政策が強力に進められました。しかし、東日本大震災での福島原子力発電所の事故によって、原子力発電への疑問が高まり、大きな岐路に直面しているわけです。
 

※本記事は、2019年4月刊行の書籍『人と技術の社会責任』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。