頑張ることは悪いこと 平成十五年三月二十日掲載

岩手県が制作した「がんばらない宣言」の広告が人気だと、過日の上毛新聞に載っていました。

それにしても「頑張る」という言葉が何なに故ゆえにこれ程までに話題に上るのでしょうか。その謎を解く鍵は、頑張るという言葉のルーツに秘められている気がします。

国語教育で知られる大村はま先生は著書の中で、「それは元々良くない意味でした。押し通してはいけないことを、無理矢理押し通そうとする、強情を張る」そんな意味だったと書いています。さらに母から「頑張るな、女の子は特にそう。頑張ってはいけない」と、何度も諭されたそうです。

頑張るということには罪悪感のようなものがあり、悪いこととしみついていたといいます。

昔の人は頑張るということを恐れ、人に言われたら悲しみ、特に女の子が「頑張り娘だ」って言われることは、本当につらいことだったようです。それが今は人を励ます言葉になり、「頑張りや」と言われればそれは褒め言葉になっています。

どうもNHKアナウンサーの「前畑がんばれ、前畑頑張れ」で変わったのではないかと思えてなりません。更に「が・ん・ば・る」という言葉の音が二つの濁音から成っていることも微妙に関係しているような気がします。

頑張りすぎた某ハンバーガー店と、マイペースで頑張らなかった某ハンバーガー店、最後に笑うのはどっち?

* 頑張るに相当する英語はありません。元々、「頑張ることは悪いこと」であった言葉の歴史が原因かもしれません。「頑張る」と同様に「しゃべる」という言葉も元々悪い意味「無駄話をする」ことであったのが、今では普通に「話す」という意味に変わってしまいました。小学校時代、先生におしゃべりは止めなさいとよく怒られたものです。最近では「やばい」の意味がやばい

十年ぶりの冷夏と無二の親友 平成十五年九月十日掲載

十年ぶりの冷夏になった今年の夏。スーパーではもう脂ののった秋さ んま刀魚が出回っています。その他にも夏を飛び越して、秋の魚が随分とれたというニュースもありました。

隣の空き地には例年になく露草が、秋の七草のクズの太く長いつると大きな葉と共に乱れ咲きしています。濃い藍色の花は梅雨(つゆ)の時期に一番よく似合うイメージがあります。この藍色の色素を顕微鏡で見ると、とがった針のような形をしています。王朝の昔はこの花の汁で布を染めたといいます。

梅雨が二度来たような、今年の冷夏を象徴するような、まさしく「つゆくさ」の異常繁殖だったような気がします。

先日、昔の仲間数人と会う機会がありました。冷夏でビールがはかどらないとか、うまくないとか愚痴をこぼしている者もいました。クリーニング屋の長男坊は昔と変わらない愉快なしゃべり口で、時の流れを忘れさせてくれました。

一方、長年勤めた大きな会社を突然辞めて、東京の小さな会社に再就職した友は久しぶりの群馬への帰郷でした。今でも趣味で音楽活動をしている別の友に何でお前は会社を辞めたんだ、もったいないとさんざん言われて「お金じゃねえ……」と言っていました。

大きな会社で役付の彼は我慢すれば安定したいい給料をもらえていました。

リストラの時代に自ら大きな会社を辞め、小さな会社に再就職した友に勇気をもらいました。そんな友にエールを送ります。

* 小さな会社に再就職した友は、私の無二の親友です。しかし、この四年後に他界しました。孤独死でした。その亡き友に捧げる詩を作りました。後に掲載しました。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『日本で一番ユーモラスな理科の先生』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。