百年に一度より日常の出来事 平成二十四年七月三十一日掲載

今年は五月に金環食、六月には日本で百三十年ぶりの金星の太陽面通過という天体ショーがありました。金環食のときはあたりが薄暗くなり、気温が急に下がり不思議な感じでした。しかし、肉眼ではまぶしくて、太陽の前に新月が重なって金環をつくっているなんて気づきません。専用メガネで、昼間見ることのできない新月が見られたと考えると面白く思います。

さて、次回この金環食が日本で見られるのは北海道で二〇三〇年だそうです。金星の太陽面通過は百五年後になるそうです。二十一世紀最後で、人生最後の観測チャンスと言われると「そうか、見なければ」と思いますが、太陽が毎日昇ることや月が満ち欠けを繰り返していること自体不思議でなりません。

ダイヤモンドが道端に普通に落ちているものだったら誰も拾いません。スズメが日本中からいなくなり、絶滅危惧種になった途端に保護されるでしょう。数が少ない物が価値があり、百年に一度の出来事に価値があるということはわかります。

しかしいつでも見られるのに、その存在すら知らない気づかないことが世の中に、自然界に無数にあります。不思議とはただ知らないだけのことです。無数にある不思議は日常に隠れているのです。

四年に一度の同窓会 平成二十四年九月二十二日掲載

オリンピックで盛り上がっている最中に大学の理科専攻生の同窓会がありました。オリンピックの年に行われるこの会に久しぶりに出席しました。卒業して三十年、自分の親が他界していく悲しい年代ですが、既に病気で他界した友もいて、年を重ねるごとに同窓会の意義を痛感します。

最近、理科離れ、理科嫌いが増えているという話題を耳にします。理科を専攻し、教師になった者にもその責任の一端があるかもしれません。

会も一段落した頃、一人一人が近況報告をしました。ずっと小学校の教員をしていて、自分の専門が理科だったことを忘れていたと冗談まじりに話した友。電流が流れるとブザーが鳴る、自作の実験道具を持ち込み、折り紙の銀紙はブザーが鳴るが、金紙は鳴らないのはどうしてかと実演してくれた大浜知子さん。

子どもから手が離れ、やっと自分の時間が持てるようになったと柔和な母親の顔で話す友。今では校長になり、フルマラソンに十回以上挑戦しては数々の大会で入賞し、走り続ける友、富岡紀夫君もいました。彼とは同じ下宿で教育について熱く語り合ったものです。群馬の教育界には数少ない、本物の教師と私は思っています。

中学三年の遺伝の授業で生徒に言いました。

「男は諦めろ、ハゲの遺伝子は男にだけ発現する性質がある。年を取ったら男は輝くんだ」と。

ユーモアと好奇心が理科離れを防ぐと信じ、幹事に感謝、同窓万歳。

※本記事は、2018年7月刊行の書籍『日本で一番ユーモラスな理科の先生』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋し、再編集したものです。