特に、小学生は時間になるまで保護者が付き添っていなければならない。校内であっても安全確保の観点から子どもを監督者のいない状態にすることを避けているのだ。責任の所在を明確にするという意味合いもある。教師への受け渡しが済むまでは保護者の責任、それ以降は学校の責任となる。その点は日本よりはるかに厳格だ。

登下校時には保護者と先生の情報交換も行われる。送迎のついでに子どもの様子を伝え合ったり、気になることを相談したりする。保護者同志のコミュニケーションも行われる。教師と保護者が日常的に情報交換できる場があるのは良いことだと思う。顔を合わせてあいさつするだけでも関係が深められる。

登下校の時間帯に学校の近くで「止まれ(STOP)」と書かれた大きな標識を持った人を見かける。子どもたちが道路を安全に渡れるように誘導する人だ。標識の多くはロリポップ(棒付きキャンディ)型なので、親しみを込めてロリポップレディ(lollipoplady)とかロリポップマン(lollipopman)と呼ばれている。かつて日本でよく見かけた「みどりのおばさん」のオーストラリア版といったところだろうか。

駐車場に生徒の車が停まっている

学校前の道路に停まっている車にPというステッカーが貼られていた。校内の駐車場でも見かけることがあるが、生徒の車だ。ステッカーは仮免許用らしい。ちなみに、Pは仮免(probationary)の頭文字だ。オーストラリアでは16歳から車の免許が取れるので、後期中等段階の生徒の中には免許を有する者もいる。

成人生徒が在籍したり、遠隔地など車を使わなければ通学ができない場所もあったりするので、学校によっては車通学を認めることがある。可否の判断は学校長に委ねられている。若者の事故が多いことは確かだが、一概に禁止するのではなく、安全管理を徹底した上で、保護者の責任のもとで許可するというオーストラリアのやり方は、ある意味で合理的かもしれない。

ヘリコプターで登校!

北部準州で農場を営む家族の話だ。農場は学校がある最寄りの町から100キロ以上離れている。近くに住む人はいない。農場の広さは何ヘクタールもあり、敷地内を移動するにも車で数時間かかるという。夫婦には小学生の子どもが2人いる。町の小学校に通っているが、自宅からは車で1時間以上かかる。

普段は夫婦が車で送り迎えしているが、ある日、大雨で道路が冠水し、通行止めになってしまった。子どもたちは学校に行きたがった。そこで、父親はヘリコプターで子どもたちを学校に送り届けたという。これも珍しいことではないらしい。ヘリコプターは農場の仕事に使うもので、遠隔地の農場ではよく使われている。オーストラリアの遠隔地ならではのエピソードだ。