学校教育は学校コミュニティが担う

学校コミュニティという概念

オーストラリアでは学校コミュニティという概念が確立しており、学校教育は学校だけでなく、学校コミュニティ全体が担うという考えが浸透している。

学校コミュニティとは生徒、保護者、教職員、地域の人々によって構成される共同体であり、地域には社会教育施設や教育訓練関係のプロバイダー、福祉関係、ビジネス産業など多様な組織が含まれる。

学校コミュニティ全体が生産性豊かなパートナーシップを構築することにより、学校教育への信頼が高まり、子どもの学習成果が高まると考えられている。

保護者はコミュニティの主要メンバー

学校コミュニティで重要な役割を果たすのが「保護者と市民協会(Parents and Citizens Association、以下、P&C)」と呼ばれる組織。日本のPTAに似ているが、PTAと違うところは保護者だけでなく一般市民も参加していることだ。

さらに、スクールポリシーの策定など学校の意思決定にも深く関わっている。加入義務はなく、活動はすべてボランティアで行われるが、活動に参加する人は少なくない。

P&Cは学校ごとに組織され、その集合体が州レベルの連合組織となる。役員もボランティアだが、押し付け合う雰囲気はなく、自主的に引き受ける人が必ずいる。学校では校長や副校長などを交えて定期的に会合が開かれる。会合は誰もが参加しやすいよう夜間に開かれることが多い。

P&Cの活動を見ていると、できる人ができる範囲で関わるというボランティア文化が社会に根付いていることを感じる。

日本では年度初めの保護者会に頭を悩ます教師が少なくない。PTAの役員がなかなか決まらないからだ。役員決めがあるので最初の保護者会には参加しないという保護者も少なくない。

私も教員時代は役員決めで苦労することが多かった。すんなり決まることもあるが、たいていは難航する。学級経営のことなど話したいことはたくさんあるのに、役員が決まらないため時間がどんどん過ぎていく。