学校教育は保護者と連携して

参観はいつでもウエルカム

「ハリーの学校はどんな学校?」

ステイ先のフランクに尋ねると、「よし、これから一緒に見に行こう」とフランクが言う。ハリーはフランクの孫で小学校3年生。

「えっ、今から?」

あまりに突然。それに、私は外国からの旅行者。よそ者だ。だが、フランクはあっけらかんとした様子で「ノー・ウォリーズ(大丈夫)」と言う。そして、ハリーの通う学校に連れて行ってくれた。

1年生の弟トミーも同じ学校に通っている。彼らの両親はどちらも同校の教師をしている。学校は地方(inner regional)の町の小規模校。

生徒は80名ほどで、保護者も教師もほとんどが顔見知り。受付で名前を記入し、ビジターの名札をつけて中に入った。フランクはたびたび学校を訪れているらしく、受付の女性とも親しげに話している。フランクと一緒にハリーのクラスに行った。

私たちが行っても子どもたちは全然気に留める様子がない。参観者の来訪には慣れているようだ。しばらく授業を見て教室を出ようとすると、担当教師がハリーに「学校を案内してあげたら?」と言った。

「授業を抜けたりしていいの?」と私は思ったが、ハリーは嬉しそうに友達と2人で校内を案内してくれた。途中でトミーのクラスの前を通りかかった。ハリーがトミーに手を振った。それを見た先生が廊下に出てきて中に入れてくれた。ちょうど日本語の授業をやっているところだった。

タイムリーなネイティブスピーカーの来訪とでも思ったのだろうか。子どもたちに日本語で何か話してほしいと頼まれた。何とも柔軟な対応だ。

オーストラリアの学校では、保護者はいつでも授業を参観することができる。参観日というものはなく、都合の良いときに行けばよい。子どもの様子を見たい、友達とうまくやっているか気になるなど理由は何でもよい。受付で許可さえ得れば自由に教室に入ることができる。祖父母でも入れる。送迎のついでにちょっと様子を見ることもできる。日本の学校にはない気軽さだ。

(付記 私のこの体験は数年前のこと。生徒保護の観点から、近年は部外者の来校が制限されつつある。)

保護者が授業に関わる

参観だけでなく、保護者や地域住民が授業を支援することもある。本の読み聞かせやコンピュータの操作、個別の学習指導、実験や作業の補助などその範囲は広い。行事やイベントでも保護者が関わることが多い。保護者は学校教育の重要なパートナーなのだ。

教育省もボランティアの活用を奨励しており、ボランティアのための研修会も実施されている。ボランティアは今や学校教育に欠かせない存在となっている。ボランティアには犯罪歴などの審査が求められており、審査の結果発行される許可証を取得しなければならない。

保護者でも、生徒に直接関わる場合は必要。許可証は州によって「ブルーカード」とか「ホワイトカード」などと呼ばれている。審査は子どもの安全を守るために法律で定められたもので、18歳以下の子どもに関わる場合は必ず必要とされる。学校だけでなく、社会教育や地域の活動、ホームステイの受け入れなどでも必要だ。