ハジ・ナースティチは、バーから背の高いグラスを持ってきたボーイを通すために、脇に一歩引き下がる。そしてまた一度お辞儀し、ゆったりとくつろいでくれればいいなと思いながらその場から離れた。

アンカは一口飲んで再びタバコを吸う。その時、彼女の関心を惹きつけたのは、隣の仕切り席での会話だった。

「いいかい、トーザ、プランクのベオグラード訪問は、約二十年前のテスラのベオグラード移住以来、最も重要な出来事になるよ」

若者の声は隠しようのない興奮に満ちていた。もう一人が、少し低いが同じく若い人の声で、言葉を返す。

「イェヴレム、僕は君が科学に熱狂することが全く理解できないな。科学と本に、ね。そして執筆に。僕だったらもっとましなことに青春を費やすけど」

「それは違う」

と、最初の若者がだんだん舌をもつれさせながら言う。

「僕だって、羽目を外すのが好きだ。君もそれを知ってる……いや、違う違う。本当は、君は僕をからかっているだけだろう。編集者はもう君に「セルビア新聞」の読者に説明する記事を書き上げるように指示したんだろ?

僕はそうであると賭けてもいい。その記事の中に、マックス・プランクが、まさにこのセルビアの首都で大衆に公表したいことが書かれているんだろ。もっと重要なことは、なぜここでそれが行われるのか、ということなんだ」

アンカは今になって思い出す──若者たちが「セルビア初紳士クラブ」に、自分が来てから十五分後にやってきて、席を占め、マスカットワインのピッチャーと酒の肴を注文し、それから脈絡のない陽気な、時としてうるさい会話に興じていたことを。

しかし彼女は、プランクの名前が出てきたのを聞いたとたんに、彼らのおしゃべりの内容に耳をそばたてた。「セルビア新聞」の記者、スヴェトザル・タンコスィチ、通称トーザという若者のことは知っていた。

プリビチェヴィチの部署の年次報告書、それはベオグラードの記者の活動状況に関するものだが、それに「諜報当局としては、ある程度まで関心を持つ」と記載されている人物だ。

記者にイェヴレムという名前で呼ばれた別の若者については、アンカは知らなかった。

彼女は革張りの座席の端に少し近寄って、聞き耳をたてた。

※本記事は、2020年10月刊行の書籍『私たちはみんなテスラの子供 前編』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。