ORIONS計画

各人が少し詳しく話しだした。その内容をかいつまんでみると、中本が、「人間が1人分丸ごと入っているiPS細胞カプセルを1人あたり200個用意します。そして100年に一度ずつそれを200回再生してたどり着く」ことを披露する。

星野は、「宇宙に出かけるならアルタカ星しかない、僕はそこに移住したい」と言い、更に星野は続けて、「僕は恋人を見るように毎日アルタカ星を見ている。そしてこの星が、毎日僕にお会いしたい、早く出かけてくださいとウインクするんですよ。織田さんも一度僕の天文台に見に来てください」と、言いながらスマホの画面を見せた。

「これですよ、ウインクしているでしょ」

織田は、星野の差し出すスマホの画面を覗き込んだ。

そこには夜空に輝く星の動画が映し出されているが、織田にはどれがどの星だか全くわからない。

「星野さん、私にはどの星だかよくわからないのですが」

「そうですか、これ、これです。このまばたいている星です」と、星野は指で指し示すのだが、やはり織田は何のことか、でもそれでは熱心に説明する星野に申し訳ないと思い。わかったふりをしながら、

「あ─、この小さいチカチカしているのですね」と、相槌を打った。

星野は嬉しそうに、まるで恋人が褒められたかのように、

「そうでしょぉ、これですよ。私はできることなら会いに行きたいと思っているんですよ」とほほ笑む。

堀内は、「ロケットエンジンはすでに開発がほぼ終わっているし、宇宙船は大型の箱を造るだけですから、大した時間もかかりませんし問題なく作れると思います」

伊藤は、「コンピューターはすでに理論的には完成の域にあります。あとは宇宙船の中で何千年何万年にも亘って人間と共に過ごせる能力を持たせることですが。何とかなる気がします」

「織田さん、やれそうですが本当にやりますか」

「残り少ない人生ですから、棺桶に入るときに、やらずに後悔するよりやってだめで後悔する方がましだよ」

「そうだ。一度だけの一回限りの人生だからな」と、誰かが言うと、

中本が、「何万年も生かされ、その中で200回も再生のたびに身体だけ死んだり生きたりしなくてはならない、それなのに人生としては1回だけですか? 苦しいだけかもしれないよ」と、反論した。

そして、この答えは2万年後に出ることになる。

ORIONS計画の始まりである。