第2章 火星人の遺跡発見

3人はその入り口の前で止まり、大きく息を吸い込む。自分たちが今、何をしているのかも認識できない。

「何だかこれ、ギリシャの神殿のような建物ね」とソヨが見上げる。

「隊長ここでやめましょう。いったん基地に帰りましょう」と、アヤが恐怖に押しつぶされてつぶやく。

ケンは本部からの問いかけに思考が戻り、「酸素はまだ残っているか」と、我に返りやめる気は全くない。「まだ3時間は大丈夫です」「もう少し調べてみよう」と、前に進む。

アヤが「とても怖いです。人数を増やして機械を持ってきましょう」と、引き返す口実をいうが、ケンは「いや、もうずいぶん前の廃墟のようだから大丈夫だよ」と、全く引き下がらない。

「確かにずいぶん古そうですが、ものすごい文明遺産ですよね」と言いながら、回りをキョロキョロ見渡して前に進む3人。

階段を上り玄関の前に立つ。かまぼこ型の屋根の天井の右側から、ステンレス製と思われる5センチほどのリングでできている、長くて太い鎖がぶら下がっている。

ソヨが「こんなところに鎖があるが、引っ張てみるかな」とつぶやく。

アヤが「だめですよ、考古学者を呼んでからにしましょう。中から何か出てきたらどうするの」と慎重論を言うが、ソヨの恐怖心は好奇心に抑えられ、「ずいぶん古そうだから大丈夫でないの」と言いながら鎖を手にした。

ケンが「本部に確認することにしよう」と言っている間に、ソヨ隊員は鎖を下に引いた。すると洞窟正面の壁が左横にスライドするように動き出した。

鎖を引き続けるソヨ。正面の壁はごとごとと、音を立てながら右側から少しずつ開いていく。

「すごーい。まだ動くわ壊れていないわ」

ケンとアヤは息をのみながら洞窟の中を恐る恐る覗き込む。

ケンが「暗くてよく見えないな、もう少し開けてくれ」と、腰を引きながら覗き込むと洞窟の中にほのかに光が差していく。薄暗くてよく見えないなと、フルフェイスのヘルメットに装着しているヘッドライトのスイッチを入れた。

ドアが開き切った時、ヘッドライトに照らされて、うっすらと奥まで見えてきた。なにが出てくるのか、どんな仕掛けがあるのか興味と恐怖心で身構える。

そこには人間のようなものが、こちらを見るように正面に向かって座っている。ライトにぼんやりと映し出された……時。ソヨが「きゃー」と大きな悲鳴を上げる。

のけぞる3人、暗闇の奥に、宇宙服のような衣装を着た黒い人形が、大きな王様が座るような椅子に腰かけた状態でこちらを見つめている。ケンが恐る恐るハンド投光器の光を当てる。その人形の容姿は人間と同じで2本足、頭部が丸く手もついている。

ケンが「生きているイヤこれ人形? 人形ではない? ロボット、ロボットではないぞ、生きてはいないみたいだ、やはり人形か……いやミイラだミイラの火星人だ」

「本部、本部、本部……」

「火星人発見、火星人の施設発見」

「火星人!! 間違いなく火星人です」

「火星人の施設です。生きている火星人ではありません。ミイラミイラです。火星人のミイラとその施設を発見です」

ケンはもはや自分が何を言っているのかわからないほどの興奮状態に陥っている。