第三話 バッジテストと初めて見る全日本フィギュアノービス選手権

1.

小会議室で、剛は翼に用意した資料を説明している。

「これがバッジテストの初級から2級までのテスト項目だ」

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「へえ、初級の次が2級ではなく1級なんですね。一級ずつ順番にテストがある。1日1つじゃないんですね。その日に一気に初級、1級、2級と連続で試験受けられるんですね」

「もちろん、合格しないと次の級は受けられない。翼は2級までのバッジテストまで合格するつもりでいなさい」

「わかりました。頑張ります」

「それじゃ、リンクで練習するぞ。頭には入ったよな」

「はい」と言いながら焦ってもう一度見る翼。

スケートリンクの上で剛と翼が向かい合っている。

「初級から2級までで翼が練習してないのが、サークルを描くステップだ。ジャンプやスピンは今回のバッジテストで心配する要素は全くない」

「ジャンプとか回りすぎたらどうなるんですか?」

剛は頭を抱えながら「それは心配してない。サークルの練習をするぞ」

「わかりました」

「まず、ハーフサークルをフォア、アウトエッジでやってみて」

翼が始めるが、エッジがつっかかって綺麗に円が描けない。

「もう一度」

何度かやってやっと少しましになる。

「次は、フォア、インエッジで」

これもうまく描けない翼。この後もバックでアウト、そしてインエッジと何度も何度もハーフサークルを描く練習を続ける。汗だくで困惑した顔を見せる翼。それを見てやはり苦手かという顔をする剛。

アリーナのメインエントランスで翼を待っている三枝子。翼がやってくるが、いつも以上に疲れている。

「今日は随分疲れてるのね」

「サークルを描くのが苦手で、うまくできないからイライラしちゃった」

「そうね、いつもは楽しそうな顔をして練習しているけど、今日は滝に打たれて修行をしているお坊さんみたいだった」

三枝子にそう言われて自分が尼僧の格好で滝に打たれる姿を想像する翼。思わず吹き出す。

「そんな顔してたわよ」

「ママひどい……」

「ひどいってそういう顔してたからね。でも後半の演技は動画を撮ったので見てごらん」

そう言って携帯カメラで撮影した動画を翼に見せる。翼が思った以上にサークルが綺麗に描けている。

「意外、思ったより綺麗!」と少しうれしそうな顔になる。

「何日か練習したらもっとうまく描けるようになるわよ」

「うん」

「翼の好きなオムライスでも食べて帰ろう」

「やった! オムライス」