「邂逅」10歳から11歳

運命の出会い 1

ここは、横浜アイスアリーナ。多くの子供や大人が自由にスケートリンクの上を滑っている。その中でひときわ楽しそうに滑っている女の子がいる。

彼女は一条翼、横浜の市立小学校に通う5年生だ。周りの人にぶつからないように、次々とジャンプを跳んでいる。

「翼、そろそろ帰るわよ」

スタンドで見ている翼の母親の三枝子が叫んだ。三枝子は、ダウンにジーパンという動きやすそうなスタイルで、いかにも活動的だとわかる感じだ。

「わかった」と滑るのをやめる翼。三枝子のところへ帰ってくる。

「本当に翼はスケートが好きね」
「うん、ジャンプしている時が、とにかく好き」

運命の出会い 2

狭い1DKの部屋。男が1人ソファで見るともなしにテレビを眺めている。この男はフィギュアスケートで元オリンピック金メダル選手だった四ノ宮剛。

部屋は、あちらこちらにダンボール箱を積み重ねて置いてあり、ほこりをかぶっていることからも長年開けていないことが見てとれる。コンビニの弁当の入れ物がゴミ箱に放り込まれている。流し台にもたくさんの皿やお椀が置いてある。流し台の横には、ビールの空き缶やワインのボトルが並んでいて、すさんだ生活をしていることがうかがえる。