2.

古都京都の西京極にスケーターたちが集まってくる。

京都アクアリーナで全日本ノービス選手権が行われるのだ。

剛と一緒に歩いている翼を見つける健太。走り寄って「翼ちゃん、ノービス出るの?」

「あっ、健太君。私は出ないよ。前に会った時に言ったでしょう。見学に来たの」

「そうか、じゃ、応援して」

「わかった」

健太は「よっしゃ」と言って駆け出していく。それを見て爆笑する翼。剛も微笑んでいる。

観覧席に翼と剛が座っている。

「同じ学年の一ノ瀬純と本城麗子を覚えておけ」と剛。

「はい」

いよいよノービスA女子が始まる。滑走順はあいうえお順だ。全部で36名出場者がいる。

鈴木千夏がリンクに出てくる。前年の優勝者なため観客席から拍手が起こる。その拍手に一礼する千夏。演技が始まる。冒頭のダブルアクセルが綺麗に着氷する。その後も次々とジャンプを成功させる。スピン、スパイラルシークエンスも無難にこなし、最後はレイバックスピンでしめる。終わった瞬間、会場は最大の拍手と歓声が起こる。

翼は剛に「やっぱりうまいですね」

「最後の滑走まで見てなさい」と剛が言う。

本城麗子は最後の滑走だ。本城麗子が出てくる。衣装も洗練されていてルックスもいいのでアイドルのような雰囲気がある。曲が始まる。冒頭はダブルアクセル。完璧な着氷。流れが綺麗だ。その後、次々とジャンプを成功させていく。そして、ステップシークエンスやスピンもうまく、感情表現が豊かで人に訴えてくる。アリーナが静まり返る。そして5個目のジャンプはダブルアクセルからのコンビネーションジャンプ。これも完璧だ。そして最後にレイバックスピンで天を仰ぐポーズで演技終了。静まり返っていたアリーナは拍手喝采に変わる。

翼は感動して泣いている。

その様子を見て「来年は翼がこういう演技をするんだ」と剛が言う。

翼はまだ放心状態だ。