第2章 人材育成の実際

1 工場労働従事者への指導の原則

工場労働者の管理は、組合員・非組合員に関わらず、守るべき原則は一つです。会社の人事制度、会計制度をもとに、労務管理上の決め事を作り徹底させること。また工場管理項目についても、図面、工程管理明細表をもとに決め事を作り徹底させること。

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仕組みを意識させ、それを守ることで正常点の観察ができ、異常を感知する感性が養われるのです。多能工を求める前に、決め事の順守徹底を先行させるのです。

その躾を通して、人は企業人に変わっていくのです。決め事を守らせる躾のポイントは、決め事と定点観測項目の内容で決まります。管理監督者の言い訳に作業要領、検査要領を作るのは、最低の所業です。

工場労働者が規定を守って起こった問題は、その規定を作った管理監督者の責任なのです。また規定では、日当り、週当り、月次での職制行動表や、異常発生連絡を何分以内で誰に行うかなど、具体化・細分化することも有効な手段です。

ここで、不良発生時の100%目視について触れておきます。工程内の100%目視はあくまで不良流出防止の暫定工程であるべきです。人間は機械ではないので100%目視となると、検査をやっていないのと同じなのです。

不良発生時には、工程管理明細表の規定内容、そしてそれを守ったうえでの不具合か、あるいは守らなかったからなのか、さらには再発か初回かなど、情報開示と分析をいかに迅速にするかが重要です。

そうした基本を工場労働者に見せつけ、規則順守の重要性を自覚させることが、万国共通の人材育成手段なのです。

インドでは、ライン作業者にペンを持たせない会社が多いのですが、その理由は統計論理に基づく管理チャートを書くのはエンジニアの仕事だからです。

それゆえに、不良発生時に情報開示と分析もせずに、作業者に文句を言うだけのエンジニアは厳しく処されることになります。