財務取締役の経験事例1

合弁相手が主要顧客の会社の取締役

その会社は上場企業で、発行株式の25%が証券市場に流通していました。

設立時は外資規制があり、外資が3割持てずに、産業ライセンスを持っていたインドの財閥と作った会社です。

しかし会社の業績が上がらず、主要顧客の第三者割当と共に親会社が51%の株主権を持ったのち、某財閥は合弁の趣旨をないがしろにして、保有する株式を市場で売り払い、現金化してしまいました。

上場は継続されましたが、年間売上がたったの200億円規模では管理経費がかかりすぎるので、会社としては非上場・非公開への移行を目指し、主要顧客と親会社の株主2名という形にしたかったのでした。

まず最初に、主要顧客の取締役に、非上場、非公開のスキームの全容を説明し、内諾を受けました。

インドでは、会社形態の変更にはスキーム・オブ・アレンジメントとして高裁の判決が必要で、膨大な法的証明と株買収額の計算根拠が求められます。

よって次に手を付けたのが非上場化で、株式の買い取り価格の設定が必要です。まず基本となる企業評価額から1株当たりの株価を算定し、それをもとに上位一定の株主の意向を入札形式で反映させ、市場からの買い取り価格を決めます。

最終的には高裁判断で決まります。株価が予算内で収まったので、上場基準の最低株式流通量25%を10%未満にまで割り込ませ、非上場化の承認判決を得ました。

これで、第一段階は完了です。第二段階は、非上場公開会社を非公開会社に変えることです。なおかつ、株主数を数十万人から、親会社と主要顧客の2社に変えようとするスキームです。

これも高裁判決なのでフォーマリティは厳格ですが、先に非上場で判決の出た買い取り株価で株主に小切手を送り付け、株主権の失効の高裁判決を得ることで乗り切りました。

これ以上の詳細は述べませんが、最初、主要顧客の取締役に説明したら、できるのかと問われました。説明したスキームは、社内の総智総力と、信頼できる第三者と練りに練った戦略でしたので、私も自信をもって説明し、そしてスキームを完遂しました。

一緒に苦労した会社のインドの皆さんと成功体験を共にできて、彼らの実力も上がり、それが一番嬉しいことでした。しかし、正念場はここからでした。

累損のある会社の立て直し、単年黒字、かつ累損一掃に向けた前述のスキームは、それらを阻害する利害関係者の排除が目的でした。非公開化した後、工場の改善活動も進み、財務取締役の役割である前述5項目も実行しました。