僕は彼女の後ろについてよろよろと自転車を走らせた。街灯とたくさんの店の光で溢れる駅前で自転車を降りると、ケガの状態がさらによくわかった。

(これは痛いだろうな)

ケガに慣れている僕でもそう思うほどだ。いまだに血がにじみ出ている傷口にチェーンの油もついて染みて痛むのか、無言の彼女の顔は険しいままだ。

「ちょっと待っててくれる?」

言うが早いか、明るい光を放っていたドラッグストアに飛び込むと、消毒液入りカット綿、消炎鎮痛軟膏、傷につかない絆創膏を買ってきた。汚れを落とす水もないし、油が付いているし、こんなものだろう。これらはケガの絶えなかった僕が昔からよく使っていたものだった。

「化膿したらいかんからよかったら手当するけど」

店の前のベンチに俯いて腰掛けていた彼女に問いかける。少し考えていたようだけど、静かに僕に向き直った彼女は、さっきより青ざめた顔で呟いた。

「ごめん、お願い……」

(まあ体育会系の女の子でもなければ、そんなにケガすることもなかったんやろうな)

そんなことを考えながら僕は手を動かした。

※本記事は、2020年11月刊行の書籍『桜舞う春に、きみと歩く』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。